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日本オープンゴルフ選手権 2010

武藤俊憲は、単独2位にも不満たらたら

かたわらの相棒が、顔を近づけて聞き直す。「え? いま何か言った?」とは、専属キャディの小田亨さん。その言葉で我に返る。笑顔で首を振る。「すいません、独り言です」。

一応はそう言って取りなすが、本当は「ブツブツと、文句ばっかり言っている」。思い通りのゴルフが出来ない自分へのいらだちだ。
5バーディ2ボギーの68。この難コースでスコアだけ見れば、満足するべきかもしれない。

「でも僕には、全然ナイスラウンドには思えない」。

たとえば12番で、5メートルのイーグルパットがカップに蹴られた。絶好のチャンスをみすみす外して「今日、一番腹が立ちました」。
そのほかにも、15番の第2打や、ボギーにした最終18番の第3打。打った瞬間、自分に突っ込む。「何がしたいのそのアプローチショット!」。思わず眉間に皺が寄る。
「自分がやりたいことが分からないショットがありすぎて、まだまだ、だと。そういうことが、スコアよりも印象に残ってしまった」と、反省しきりだ。

それに引き替え、単独首位に立った藤田には、舌を巻くばかりだ。15番で池に入れながら、パーを拾ったリーダーの様子は、コース内の大きなスクリーンで目撃した。

「あの場面は僕ならボギー」。
1打ビハインドで迎える最終日は、その藤田との直接対決となるが、「藤田さんとの勝負なら、僕は負ける」と、今から敗北宣言?!

いやいやそれは、不甲斐ない自分への強い怒り。そして「もっと頑張らないと」という自らへのカツ。このゴルファー日本一決定戦は通年どおりであれば、全英オープンなど「数々のオプション」がついてくるばかりか、「ツアー3勝とメジャー1勝ですと言えたなら、選手としての格も上がる。ハクがつく」。悲願のタイトル獲りへ。の熱い思いの表れでもある。

今年は5月のダイヤモンドカップで3日目を終えて9位につけながら「軟骨の石灰沈着」という症状で、左親指の付け根がパンパンに腫れ上がり、無念の棄権。

懸命の治療で復帰するなり今度は8月の「VanaH杯KBCオーガスタ」で熱中症のため棄権。完全に回復するために、4週間を要した。
怪我や体調不良に追われるうちに、「気がついたらもう10月」。
現在の賞金ランク92位は、とうていこのまま終われない。

2006年の初シード入りから、自分に課した決まりがある。「プロならば、賞金シードは最低ライン」。一昨年のツアー通算3勝目の資格で来季ツアーの戦上に立つなどは、プライドが許さない。
日本タイトルでのツアー4勝目で、そのすべてを払拭してみせる。
「明日は、気持ちだけでも負けない」。
がむしゃらに、頂点を目指していく。

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