カシオワールドオープン 2018

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虎スイングは必殺武器!? 崔虎星(チェホソン)が5年ぶりの2勝目

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  • 自慢の嫁から頬にチュッ。ああ、なんて幸せなんだ。
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  • 黒潮の屋根裏で虎さんびいきの解説。タケさんも、ありがとうございました!!

最後の最後にこそ大注目の虎ダンスが拍子抜けしたのは最後30センチのバーディが、勝利のパットになったか自分では、分からなかったから。
「まったく順位を把握していなくて」。
虎ファンの大歓声で、優勝したんだと分かった。
あとで慌ててやり直した“ゲッツポーズ”は取ってつけたようになってしまった。
改めて華麗に舞って、グリーンを降りると普通なら、まずまっすぐアテスト部屋に向かうところをなぜか、キャディバッグを自らグリーンサイドに飾ってしゃがみこみ、勝手に撮影タイムを始めた虎さん。
前代未聞の表彰式になった。
ほんとの撮影会ではまた尽きせぬサービス心で、優勝杯を掲げたまま何度もくるくる虎ダンス。
大会主催の樫尾和宏・カシオ計算機代表取締役社長にも「虎さんには元気をいただいた」と、最高の労いを頂ければ、この上ない喜び。
世界中を笑顔にしたこの1年。そのご褒美にもふさわしい、楽しく愉快なVシーンとなった。#虎劇場

2打差の単独首位で、5年ぶりの2勝目を狙う前夜は「9時に寝たのに11時半くらいに目が覚めて1時、2時…4時半にまた覚めてそれから眠れず」。
厳しい戦いになると思った。
「精神力で頑張らないといけないと思った」。
2番で、15メートルものパーパットをしのいで「俺にもできる」と言い聞かせた。
「思い通りにならないのがゴルフ」が口癖。
「でも今日は、なぜか、思い通りにいった」。
パワーヒッターのジョーンズ相手に最終ホールまでもつれる大接戦を、45歳の創意工夫で乗り切った。

右足を高く蹴り上げる変則フィニッシュ。
「若い選手は飛ぶし、自分は歳を取るし、勝つチャンスも減っていく。どうしたら飛ぶかと考えて、スイングアークを大きくしてみた。自分なりに改造していくことで、少しずつまた飛距離が伸びてきた」。
もともと独特だったが「昔は今より全然おとなしかった」。
オーバーアクションを加えてよみがえらせた。それが、今季SNSで世界中に拡散した虎スイングだ。
米ツアーのジャスティン・トーマスもすばやく反応した。「僕もマネしてみようかな!?」。話題に拍車がかかり、一気にファンが増えた。
「ロープの外で、僕のスイングをマネしている人を見ると嬉しくて。もっとサービスしようという気持ちになる」。
一見、妙ちきりんな素振りやフィニッシュばかりが話題だが、どんなに派手に振り切っても大ケガがないのは打点が一定で正確だから。
「僕はゴルフを始めたのが遅かったので、体が硬い。スイングのための柔らかさを持っていない。それを補いインパクトのパワーを最大限に伝えるために、体をくるっと回しています」。
抜群のバランス感覚で球の行方を追いながら、クラブを右に左にコミカルに動かすのは「当たった感触に、左右どちらに飛ぶかを感じて体が反応している。体を右にすると右に。左にするとボールも左に行く。気持ちが入ってあんなフィニッシュになる」。
本人はいたって真剣でも、見ているみんなを笑顔にする。
「みなさんに笑って頂けるのは嬉しいですし、今年はそれを味方に、力に変えることができた。人の顔が違うように、スイングも色々あっていい。私の必殺武器です」。
シーズンの土壇場V2でファンの心を完全にわしづかみだ。

その数奇な経歴と、背中をしならせて振る姿からフィッシャーマンスイングと称されるようになったが、漁師ではない。
「船には乗っていません。マグロをさばいていました」。
水産高校を卒業後に、就職した水産加工会社で、マグロを解体中に、右手親指の第一関節のほとんどを切断したのは20歳のとき。
自身の腹肉を移植する手術を受けて取りとめたが、冬はそこの肌が荒れて血が出ることもある。左手親指よりも短く、普段の生活にも支障がないわけではない。
「そのために、2年の兵役にも就けなかった」。
友人が次々入隊を済ませていく20代。「人生を紆余曲折した時期があった」。
職を転々と行き着いたのが「3食宿つき」のゴルフ場の仕事。
練習場でボール拾いをしながら初めてクラブを持ったのは、25歳のときだった。
「最初のラウンドは、150くらい打った記憶がある」。
独学の猛練習で、1年あまりで韓国でいうセミプロの資格を取った。
「さらに大きな“海”を見てみようと思った」。逆境を乗り越え、遅咲きのプロ人生を漕ぎ出した。

2013年に、ワンアジア共催の「インドネシアPGA選手権」でツアー初V。
しかし昨季は今大会の13位タイでぎりぎりのシード権確保に「あの夜、妻とうれし泣きをした」。
8歳下のファン・チナさん。ロープの外をついて歩くその姿に「美しい…」と、結婚14年目の今も惚れ惚れ。
愛妻のためにも「今年1年は、去年のこの試合の最終日の18番ホールの気持ちのままプレーしようと頑張ってきた」という。
「これからは、1ホールも1打もすべて無駄にしない」と誓った今季。自慢の嫁を、1年後の最終ホールで今度は素敵な笑顔にしてまた惚れ惚れだ。

土壇場で手にした次週のシーズン最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の出場権。
5年ぶり2度目の頂上決戦は「夢の舞台。また出られるなんて。骨が折れるまで頑張ります」。
今年最後にもう1試合、虎ダンスが披露できると張り切る虎さん。
ところで、なぜまだグローブをはめてるんです?
手袋をしたままずっとマイクを握る左手に、報道陣から指摘を受けたのは、もう優勝会見の最終盤。
「そういえばさっき、グローブにサインして欲しいとファンの人に言われて。サインする準備をと思ったまま外すの忘れてました!!」。
抱腹絶倒の虎劇場は、そんなとぼけたオチで幕を閉じた。
いつも、周囲の気持ちを明るくする色を身につけ、呼びかけには必ずそちらに笑顔で手を振る。
求められれば道化に徹して笑いを取る。いつもお茶目で、気配り虎さん。
「ゴルフの人気を回復したい。一生懸命に頑張る姿はきっと、伝わるはず」。
男子ゴルフに燦然と輝くタイガースターは、誰の心も惹きつけてやまない。熱い思いが今季、世界中に大きな波を起こした。

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