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全英オープン最終日神山隆志は通算3オーバー、27位タイ

メジャーの舞台で、「“まあいいか”の1打は、絶対にやってはいけない」と、身にしみた。11番で、バーディを奪って迎えた12番。
「ティショットで魔が差した。前のバーディの、気の緩みが出た」と、右のブッシュ。脱出不可能でアンプレヤブルを宣言し、1打罰のダブルボギーだ。

「右からの風、とわかっていながら、右にすっ飛んでいってしまった。安易なショットでしたね」。と、反省したが、逆にこれで気持ちが引き締まった。

再び高い集中力を取り戻して進んだバック9。
16番パー4で、バンカーから残り60ヤードの第3打をチップイン。イーグル奪取に、ロープの外から地元ファンの大声援が飛ぶ。
「イエーイ!!タカシ!!」。
「・・・あれは気持ちよかった。僕のための“イエーイ”だと思ったら、余計に気持ちよかった!」。

練習日に18番グリーンの巨大なギャラリースタンドを見た瞬間、「最終日、絶対にここに上がってくる」と心に誓った。

強い風、硬いフェアウェー、いたるところに点在するコブ、ポットバンカー。
タフなコンディションに加えて、初のメジャー大会へのプレッシャー。

「自分の意思ではどうにもならないことが多い」この舞台で「初日のうちにパンクしちゃうのでは」という不安も乗り越え、いよいよやってきた最終日の18番ホール。
巨大なギャラリースタンドが完全に埋まり、歓声は、ティグラウンドまで地鳴りのように聞こえてきた。

声援にこたえ、手を振りながらグリーンに上がった瞬間は背中に鳥肌が立っていた。

タフな戦いを耐え抜いて味わう、その充実感。まして日本勢最高位の27位に「最高でした!!」。

途中、リンクスコースの罠に、めげそうになった日もある。
「ボール、クラブが良くなり、飛距離が伸びた今でもこんなに大変なのに、昔の人はどうやってプレーしてたのかな、とかも考えた。もしかしたら、ゴルフは道具なんか関係ないのかな、とか・・・。そんなこと考えながらまわってた」。

4日間、これほどまでに集中力を持続して、ゴルフをしたことはない。
「苦しかったけど、でも苦しい中でやったほうがゴルフは面白いってことがわかった。この気持ちを忘れないように、また来年も絶対に来たい」。

18番グリーンからアテスト場に続く道。そこに選手のボールを求めて待ち構える少年の一団がいる。
神山がそこを通りかかった瞬間に大合唱が始まった。

「タカシ!! タカシ!! タカシ!! タカシ・・・!!」。

精一杯、戦いぬいた選手をねぎらう大合唱。
思わず笑顔になって放り投げたボールは、高い弧を描いてひとりの少年の手に収まった。

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