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バナH杯KBCオーガスタ 2008

54歳の飯合肇が首位タイ

あわやロストボールを回避した飯合は、ボールの行方を見ていてくださったギャラリーのみなさんに感謝した!
コングが泡を食った。「俺のボールが消えちゃったよ!」。朝から降りしきる雨をたっぷり吸って、すっかり重たくなったラフを足で闇雲にかき分けるが、出て来ない。

芥屋ゴルフ倶楽部の9番グリーンは、左サイドがブラインドになっている。
本人の側からは、球の行方こそ確認できなかったがセカンドショットは確かにその辺りに落ちたのだ。

しかし、どこにもボールが見あたらない。
慌てふためく飯合に、助け船を出したのは居合わせた数人のギャラリーだった。
「ここに落ちたのを確かに見たよ」。
「うん、私も見た見た!」。
全員が口を揃えた証言は、みなかなり具体的で「このラフの上に浮いていた」と、一人が指さした箇所を大捜索。
でもやっぱり見あたらない。

「そういえば・・・さっきボールの辺りにかがみ込んでいた人がいたわ」との重要証言も飛び出して、これは間違いなく誰かが持ち去ったのだということになった。

多くの確かな目撃談があったため、幸い無罰でドロップ。
誰も見ていなかったら、ロストボールになっていたところだった。
一時騒然となったハプニングも、しかしそれで終わりではなかった。

なんと、飯合はそのバンカー超えの難しいアプローチを直接入れて、チップインイーグルを決めたのだ。
たちまち首位に躍り出て、54歳が深々と頭を下げた。
「9番で、みなさんがちゃんとボールを見ていてくださったからこその今日のラウンドです」と感謝した。

1993年の賞金王も、今季は出場権がない。
これがようやく4戦目のレギュラーツアーは、なぜか気持ちが萎えてしまう。
「飛距離もそんなに遜色ないのにね」。
主戦場にしているシニアツアーは現在賞金ランク2位につけるが、「レギュラーに来ると、たちまちおかしくなる。俺には、もう絶対に出来ない打ち方なんかを若手に見せつけられると引いちゃうんだ」と苦笑いで打ち明ける。

その言葉どおり、昨年までさかのぼって、7試合連続の予選落ちが続いている。

しかし、今週の飯合は水を得た魚のようだ。
何しろ、主催者推薦を得て参戦する今大会は、85年にツアー初優勝をあげた思い出のトーナメントだ。
あのときは、痛風に苦しむ尾崎将司を2位に退けて勝った。
あれから20数年を経て、いま自身があのときの師匠と同じ痛みを抱える。
「痛風なんて恥ずかしいんだけど・・・。今頃、ジャンボの気持ちが分ったりして」と苦笑しつつ、「推薦してくださったスポンサーのためにも、この程度でやめるわけにはいかない。存在感を見せたい」。
その意気込みこそが、難条件下での好スタートの原動力だった。

首位に立つのは、2001年のサン・クロレラ クラシックの3日目以来。
つま先を外に蹴り上げる独特の歩き方から、ジャンボ尾崎に“コング”とあだ名をつけられた男が、久しぶりに力強い一歩を踏み出した。

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