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マンシングウェアオープンKSBカップ 2006

武藤俊憲「次は遠慮せずに勝つ」

ホールアウトしてから1時間後。状況は一変していた。プレーオフに備えて向かった練習場から、いったん引き上げてきたときだ。首位を走っていた聖志は16番、17番で連続ダブルボギーを打って後退。
単独2位に溝口がいたが、武藤とは2打差がついていることを知った。

溝口が、18番でイーグルを取ったらプレーオフ、という場面。
池の手前に刻んでいた第3打が、ピンまで7メートルで止まった瞬間、武藤の初優勝が決定した。
いっせいに沸き起こった祝福の拍手。
笑顔で受け止めながら、どことなく居心地の悪さを感じていたのも確かだ。

会場のほとんどはおそらく、聖志の優勝を信じて疑わなかったに違いない。
武藤自身、“藍ちゃんのお兄ちゃん”の優勝ならきっと、もっと大会は盛り上がっていただろう、と思わずにいられなかった。
なんとなく気まずくて、最終組が引き上げてきたときは、とっさに「どこかに隠れようか」と思ったほどだ。
顔を合わすなり、謝っていた。
「聖志さん、すみません!!」。
「・・・おまえ〜、空気読めよな!」。
機転の利いた聖志のジョークに、むしろホっとさせられた。
「ナイスプレー!」聖志の賞賛の言葉に、やっと実感がわいてきた。

コソコソすることはない。
最終日にベストスコアをマークして、実力で勝ち取った。
しかも、ボギーなしの「ほぼ100点満点、完璧なプレー」で頂点をつかんだ。

先週の日本プロ。やはり初優勝を飾った近藤とは同級生だ。
そのほかに星野英正、矢野東、高山忠洋、田島創志・・・。
スター街道を歩む彼らと、これでようやく肩を並べることができたのだ。
早くも、次の2勝目に照準を定めた武藤は「次は、遠慮せずに勝つ」。
胸を張って、男子ゴルフを引っ張っていく。

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