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東建ホームメイトカップ 2006

中川勝弥が単独首位

最終9番パー5。第3打はわずかにグリーンを外したものの、カラーからピンまで6メートルあった第4打をパターでねじこみ1日10アンダーは62。
満面の笑みでホールアウトしてきた中川の背中に、同組でまわった桑原克典と宮瀬博文が揃って皮肉交じりのジョークを浴びせる。

「もう、嫌になっちゃう! 勝弥のせいで、こっちはぜんぜん入らなかったんだから!!」(宮瀬)。

「勝弥は今日、今週分のパットが入っちゃったんじゃない? ・・・いやひょっとしたら、来週分まで入っちゃったかも!! それくらい入りまくってたよ」(桑原)。

本人も、「いったい、どこまで行っちゃうんだろう、と。途中で怖くなってきたくらい」と目を丸くした自己ベストの大量アンダーで、単独首位だ。

一人でも、ちゃんとやれるということを証明した。
3年間、バッグを担いで支えてくれた妻・めぐみさんが、昨シーズンで“引退”を決めた。
特にグリーンの読みが完璧で、すっかり頼り切っていた。
その分、自身のカンが鈍りつつあることを自覚し、「これではいけない、と・・・。嫁にも“そろそろ一人でいいんじゃない”と言われたので」。

コースでのコンビはひとまず解消し、めぐみさんは専業主婦に。
中川は、今年は主にハウスキャディを起用しながらツアーを戦うことに決めた。
その第1戦となった今大会でのスタートダッシュは、めぐみさんを安心させる何よりの材料となった。

昨年の中川の賞金ランク74位は、規定試合数に満たない選手をのぞいた上位70人に与えられる、シード権のボーダー線だった。
さらに一昨年前の同ランク71位は、「ブービー賞(笑)」(中川)。
これまで3年間、シード権を確保してきたとはいうものの、毎年、線上の戦いを演じてきただけに「そういうのはもう、去年で最後にしたい」という言葉に切実さがこもる。

このオフは、めぐみさんの故郷・石垣島に長期滞在し、トレーニングに汗を流した。
砂浜を走ったり、3時間半かけて自転車で島一周にトライするなど、鍛え上げて迎えたこの開幕戦。

日本ゴルフツアー機構では毎年、選手のプロフィールや戦績を載せたガイドブックを発行している。
各選手のデータを記した一番下に『ファンへのメッセージ』という欄がある。
中川が寄せたのは「今年こそ優勝します。応援よろしくお願いします」というもの。
さっそく、有言実行のチャンスが見えてきた。

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