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ACNチャンピオンシップゴルフトーナメント 2026

池田勇太の格闘の日々と見据えるこれから10年

池田勇太(いけだ・ゆうた)が7年ぶりの復活優勝を、天国のジャンボさんこと尾崎将司さんに届けた。
空を仰いで絶叫した。
「ジャンボさん、優勝しましたよ!」。




ジャンボさんならなんと答えてくれただろう。
うっすらと、涙を浮かべて想像する。

「きょうだけじゃなく、いつもジャンボさんのことを思っているけどおめでとう、とは言わない気がする。やっとか、と。長かったけど、ここからリスタートじゃないの?かと。まだ俺の4分の1以下か~(ジャンボさんは通算94勝)って言って欲しいし、その言葉は今はもらえないけど、そういわれていると思ってまた来週から頑張りたい」と、夕空に思いを馳せる。




3季ぶりの賞金シードに復活した今年は、ジャンボさんの墓前に復活優勝を報告しにいくのが一番の目標だった。
「これでやっと宍喰(現・徳島県海陽町=ジャンボさんの故郷)に行けます」。

ジャンボさんの勝負カラーでもある紫色のmuta MARINEと、サンバイザーが夕陽に映えた。



これから見据える10年を、象徴する決着にもなった。

2打差の4位タイから出て、1イーグル、3バーディ、1ボギーの「67」をマーク。
通算14アンダーで並んだ2人は、25歳の古川龍之介(ふるかわ・りゅうのすけ)と、24歳の岡田晃平(おかだ・こうへい)。

「今の若い子たちは、レベルの高いゴルフ技術を持っています」。初優勝をかけた2人の粘りには目を見張るものがあった。


プレーオフ2ホール目からは古川(右)との一騎打ちに


プレーオフは、4ホールもかかってしまった。

「お待たせしてしまってすみません!」
西陽も傾く寒空の中、最後まで残ってくれた大ギャラリーに詫びた。

「でも本当に、こういう若い選手たち、世代がすごく増えているのでね。自分ももう今年41歳になるんだから。今まで以上の努力に、今まで以上の時間を費やして、若い選手に負けないものを作っていかなきゃいけない。過去のことはすべて忘れてまた一からスタート。新しい10年を見据えて大きく成長したい」。



2019年の「ミズノオープン」で通算21勝目を達成し、永久シードの25勝目も間近と期待をされた池田が突如、全身に原因不明の激痛を発症したのは、22年の6月。
一時は歩行も困難になった。
食事をかみ砕くことができず、流動食しか喉を通らない。両手50キロは優にあった握力は、特に右が極端に落ちて20キロを下回った。

「指を1本ずつ動かすこともできなくなった」。
ピアニスト用の練習器具を使って、指先の回復を図ったことも。

それらの原因が、すべて噛み合わせの異常からくる「顎偏位症(がくへんいしょう)」にあると分かってしばらくは、矯正器具を装着して過ごしたが、口内は常に血だらけ。異物を口に含む苦しさにえずきながらプレーを続けたこともある。




手術に踏み切ったのは23年オフ。
全身の痛みは消えたが、代わりにゴルフの命綱ともいえる感性を失った。

もともと生命線だったアプローチとパターは特に壊滅的。
「思ったとおりに力が動かせないって、体が動かせないってこんなに辛く苦しいものなんだ、と」。

23年に賞金シード落ちを喫した。
24年には今度、歯やあごの骨を10か所以上削る手術も受けたが、今度は術前後で両肩の高さや両腕の長さに3センチもの差異が生じてそれも不振の原因に。
2016年には年間4勝で賞金王に就いた男が、サードQTから這い上がり、24年と25年はチャレンジトーナメントのACNツアーでもプレーした。

「シードも落として、QTやってる頃なんかはもう最悪。このまま落ちぶれて行くのかな、とか…。それでもやっぱり克服して、すこしずつ、微々たるものですけど前進してきました」。
どん底を、見尽くしての復活Vは格別だ。

ツアー史上最多の94勝中、63勝を40代以降に達成したジャンボさんもまた、80年代のスランプを克服してからが強かった。
「私もそうなれるように。ジャンボさんの最年長記録(55歳)には届かないかもしれないけど、50になるまで勝っていきたい。これからまた10年、頑張っていきます」。

ACNグループが本大会の主催についてくださって今年で4年目だがその前身から数えると、今年で開催57回目。ジャンボさんが「三菱ギャラン」の時代の1997年に連覇を達成している伝統の一戦で、復活優勝を刻めたのも嬉しい。

これで永久シードの25勝まであと3つ。
「来年には終われるくらいにこれからまた優勝を重ねていきたいな、と思います」。

悩み苦しみ抜いたからこそ見られる新たな景色が、きっと待っている。


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