記事

中日クラウンズ 2026

V直後に登録者数43.5万人越え。堀川未来夢チャンネルの仮想とリアル

優勝前夜。

堀川未来夢(ほりかわ・みくむ)は、自身の動画チャンネルで1本の動画をアップしていた。
「残り3ホールで2打差のトップに立っていた場合のマネジメント」は確かに、タイトルだけみれば、リアルになった。

しかし実際に、2打差のトップで迎えた上りの3ホールは「メンタルがまったく違った」。
練習ラウンドで撮影した動画では、スプーンを持ってフェアウェイを捉えた最後18番。

現実では1Wを握った。



今週の和合では、「ほぼほぼ封印していた」という禁断のクラブである。

2019年の最終戦を契機に、最初パターから出るようになったイップスの症状は、「グリーンで右手が震えだしたら、次のティショットも影響して。ドライバーにも出始めた。今週も持てばほぼ林。使い物にならない。本当は持ちたくない」。

それでもあえて持ったのは、「スプーンで刻んでフェアウェイに行っても、左足下がりの180ヤードが残って、ボギーもあり得る。何のメリットもない」と考えたから。

逆に、後ろからくる細野がドライバーでフェアウェイを捉えたとして、残り120ヤードでバーディを奪える確率が高くなる。

追いつかれてプレーオフの可能性も出てくる。
「いまこの状況で持てなければ今後もたぶん、持てることはない」。

いちかばちかの判断だった。
構えた瞬間「出るな」と“再発”を直感した。
「ならバンカー左のほうに打って、反応は片方だけに。インパクトの瞬間に、自分で右に反応させて、左には行かないように」。
計算尽くしの1打は、左のバンカー近くで跳ねて出てきた。

フライヤーを想定し、52度で打った136ヤードの2打目は、がっちりグリーンを捉えた。
手前7メートルのバーディパットを打つ前に、後続の細野と2打差がついていることが分かって「“バント”のサイン。狙わない、オーバーさせない。寄せに行くだけ」。



かつてロングパットをウェッジで打ったこともある。「6メートルののぼりが横に2メートルも飛んでハーフで3パットを5回とか。今でも順手で握るとイップスが出ます」。

今週は、クローグリップを基準に、距離やラインによって3パターンの握り方を用意するなど、試行錯誤を重ねて「隠し方を掴んだ」。
大観衆の前では苦悩も恐怖も見せずに2パットのパーで収めて通算5勝目を掴んだ。

初出場の2016年から8大会連続9回目の出場を重ねた本大会は、「一番、好きなコースのひとつで、一番勝ちたい試合のひとつで、いつか勝てると思っていた大会。歴史に名前を刻めて嬉しいです」。



マネジメントの鬼がついに和合を制覇して、口にした今季の目標は、今年から導入されたポイントランキング制度で、初代の年間王者に輝くこと。
なぜ今年になって急に?と聞かれて答えた理由も面白い。

「ランキングで1位になった選手はみんな海外に出ていって、金谷選手だったり、中嶋選手だったり、星野選手だったり、チャン・キムだったり、いわば強い選手がどんどんいなくなるのでいつか自分も獲れるだろうって。今年は、すごく気持ちを入れてます」。


66回大会での優勝で、開催40年(回)以上のトーナメントに付与される暦年プレミアムポイントの525ptを獲得してランクトップに浮上。
ターゲットを決めるとこの選手は強い。


⛳最新のポイントランキング


潜在的にイップスの症状を抱える選手は多いが、自ら告白する選手はあまりいないと堀川は言う。

「でも、僕はそんなに重く思っていない。完全には治らない言われているけど、ふとなったんで、ふと治るのかなとも思うし、なったからこそゴルフの熱量があがって練習量も増えました。僕は上手く付き合ってるほう」と、ニコリと笑う。

コースでは深刻な症状を内に秘め、V争い時もピースやグータッチでファンとひとつになろうとする姿は、ゴルフ界を盛り上げたいという熱い思いに溢れている。

コロナ禍で、試合数が激減した時に「何か僕ら選手のことを知ってもらうことを」と、始めた動画チャンネルはV直前まで登録者数43.4万人だったのが、直後に43.5万人まで増えていた。
通算5勝目による宣伝効果は絶大だ。


関連記事