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フォーティネット プレーヤーズ カップ 2025

大岩龍一「僕も頑張ろう、という気に」片岡の日本オープンVに感泣

次は自分のために涙を流す。
地元千葉県出身。大岩龍一(おおいわ・りゅういち)が、昔なじみのコースで今度こそ、プロ7季目の初Vに挑む。

ことし誕生した選手会主催大会の会場が決まった瞬間、ちらりとよぎったそうだ。
「コースは良く知っている。チャンスはある」。
高校時代に初めて回ったときは、今よりもっと難解に感じた。


「風が吹くと難しく、リスクマネジメントが大事。トリッキーなコースという印象は変わらない」。
しかし、いまも年2,3回のペースでラウンド経験を重ねるここ成田ヒルズカントリークラブは、「フェアウェイを捉えて、池を回避できればバーディもたくさん取れる」と、大岩も話すとおりこの日も好プレーにはご褒美たっぷり。

前半の2番、7番でスコアを伸ばすと、30分程度のインターバルを挟んで9、10、11番と、3連続バーディが来た。
さらに14番では、「難しいのでグリーンの真ん中、と思って打ったらグリーンの真ん中が意外とバーディチャンス」と、5メートルも逃さず、ボギーなしの6バーディ「65」を記録。

通算7アンダーは3差の4位で決勝ラウンド進出した。




デビューの19年から勝てそうで勝てない展開が続いており、今季だけでも2位2回。
「僕もけっこう惜しい試合を逃し続けてきた男です」と、自認する大岩を奮い立たせたのが、無二の親友の快挙だった。

マスターズの出場権もかかった2週前の「日本オープン」を制した片岡尚之(かたおか・なおゆき)に、プレーオフの可能性を“遠隔操作”で知らせたのは大岩である。

全選手が1番から出るワンウェイ2サムの最終日に大岩がスタートしたのは早朝7時30分。
「僕はすごく早かったし、大学1個下の(清水)大成が伸ばしていたし、尚之の優勝はないだろう、と。大成にも敬意を表し」と、上がってすぐ帰路についたが、その後、片岡が7打差からあれよとV争い。

急いで幕張のパーキングに車を停めて、車中テレビをつけたら、すでにプレーを終えた片岡が、マスター室前で誰かと談笑している姿が大写しになった。
「本人もまさか、と思っている。すぐに電話して、尚之に“プレーオフだよ”と」。

スマホを握り締めた片岡が、大岩とそんなやりとりをしている風の様子もまたテレビに映りこんでおり、しばらくして歓喜の瞬間は訪れた。
「尚之も1勝(2021年JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品)してからなかなか勝てなかったけど。2勝目が日本オープンというのが僕にも本当に嬉しくて」。

自分事のように喜んだが、さらなる感動が大岩の胸に訪れたのはその翌週の祝勝会。
2人共通の谷将貴コーチがきゅうきょ作成したという片岡のV記念ムービーを宴席で披露したとき、大岩の目からも大粒の涙が…。

「4年前にツアーに出始めてから、ずっと一緒に練習してきた。一番の友が日本オープンという大舞台で優勝したのであまりに感動しちゃって」と、人目をはばからずに大泣きしていた。

V会見で、自らを「シルバーコレクター」と呼んでいた片岡。
「頑張ればいいことある、と僕も信じたくなりました。尚之が今年残り6戦頑張ろう、という気にさせてくれた」と、感謝する。

今季開幕前の追突事故で痛めた背中が癒えたと思ったら、夏には逆流性胃腸炎に。また、最近まで膝痛にも悩まされたが、秋の深まりとともに徐々に解消。

意欲もわいてきた。

今週は何年かぶりに、プロゴルファーで7つ下の弟・慶尚 (よしなお)が、バッグを担ぐ。
「今年のQTファーストに落ちて暇だから稼がせてください、と(苦笑)」。
地元できょうだいタッグ。
かたわらの弟にも、今度は自身の感動シーンを見せられるといい。


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