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憎らしいほど強い。憎らしいのに愛される「僕らも大好きでした」賞金王・中島啓太の魅力

賞金王は有終の美を飾れなかった。
中島啓太(なかじま・けいた)は、蟬川泰果(せみかわ・たいが)に1差で負けた。
今年の顔30人が集う頂上戦で最強の称号は逃した。

接戦で入った17番で「ラインは読めていて、うまく打てれば入る自信はあったが思ったより強く打ってしまった」と、1.5メートルのバーディパットを外したのが致命傷。
でも「ずっと冷静にいいプレーができたし、本当に17番だけ。自分との闘いには克てたんじゃないか。毎日スタートホールを最終打者として打てた。負けてしまったけど、しっかり責任と自覚を持ちながらできたと思う」。

勝っても負けてもプレー後に、低音ボイスで応えるコメントはいつも完璧。
でも、ときどき急にニヤニヤしながら明かすエピソードはユーモアたっぷり。

プロ転向わずか1年あまりで、颯爽と駆け上がった。
23歳での戴冠は、石川遼と、松山英樹に次ぐ3番目の年少記録になった。

若いのに憎らしいほど強い。
でも、可愛がられて愛される。

先輩プロにもいじられやすい。
今週は、勝手に散髪に行ったと、42歳の岩田寛(いわた・ひろし)をぷんぷんさせた。


先週の「カシオワールドオープン」で、最終戦を待たずに賞金王を決定させた。
その開幕前、ロッカールームで行われた来季プロフィールの撮影会で、先輩たちに取り囲まれた。

「いいね~、笑って~」「いいよ~」と、モデルさんの撮影会みたいに冷やかされてモジモジと照れまくり。
その一部始終は堀川未来夢(ほりかわ・みくむ)のインスタグラムで公開された。

もじもじはまたの機会に


キャディバッグのお守りは、姪っ子ちゃんからもらったビーズの腕輪で、オフの癒やしも姪っ子ちゃん。
この秋、唯一のオープン週では練習も筋トレも、午前中にささっと済ませて姪っ子ちゃんと「トイザらス」。

お手々をつないで何買いたい?とつかの間デート。
「姪っ子にハマってます。お金めちゃくちゃ使ってます」。
お部屋の中でも乗って遊べるおもちゃの車を買ってあげたと貢ぎおじさんデレデレだった。

キリっと隙のないプレーと、愛されキャラとのギャップ。

中島が一昨年に、史上5人目のアマ優勝を飾った直後から「まー、かっこいい。ナイスバーディって言ったら、ありがとうございます、って。クリス・ペプラーさんみたい。声までかっこよかった」と、べた褒めしていたのは宮本勝昌だった。

「僕の中では石川遼、松山英樹に続く日本の宝の3人に入る」と、言った。
宮本もシニアツアーの賞金王に就いた2年後の今年、その言葉は現実のものとなった。

「彼が焦っているのを見たことがない」とは、金谷との賞金レースを支えてきた島中キャディ。
「あの若さで末恐ろしい」と、いつもひそかに感心するのは、どんな場面でもぶれない23歳の冷静沈着なプレーだ。

その一端を支えるのはアマ選抜のナショナルチーム入りした2015年から、中島が専用のスコアアプリに記録してきた膨大なプレーデータによる。

各ホールのピン位置や1打ごとの残り距離、ショット時のライ等々、プレー後にすべての状況を入力していく。

「それだけでもけっこう大変と思いますが、ずっと続けているみたいです」と、島中キャディ。

それを頼りに、4日間でゲームを組み立てているから、たとえ出遅れた週でも焦らずに済むというわけだ。

昨年末からコースメモも見ずにプレーし、感性はますます研ぎすまされていく。


金谷も中島も、互いに、互いとのプレーが「一番楽しい」などと語ったが、2人を支える2人のキャディもまた同じだった。
「ほんとに金谷選手とのプレーを楽しんでいる様子が僕らにも伝わってきて、僕らまで本当に楽しいね、と」。
島中キャディは、金谷のキャディのライオネルさんと、よくラウンド中にそう言い合って、うなずき合っていたそうだ。

レースを終えてもまだまだ続く。ケイタとタクミのストーリー 


「ほんとに、なんていうか、素晴らしいのよ2人の空気感が・・・。ああいう2人の雰囲気が、僕らもほんとに大好きでした」と、島中キャディ。


奇しくも中島は、1973年のツアー制施行後からちょうど50代目(23人目)の賞金王となった。
最終戦を待たずに颯爽と戴冠し、最終戦では勝てなかったが、最終戦でも最後の最後まで、強さを見せつけた。

1差で敗れたが、ピンと伸ばした背筋を丁寧に折りたたみ、大ギャラリーに向かって深々と頭を垂れて、18番グリーンに入った。
優勝した蟬川を握手とハグで称えた。

今年最後の日もいつものように、サインの大行列に最後まで丁寧に対応してから帰路についた。
「どういう気持ちで・・・?? 当たり前のことをしているだけです」。
23歳が男子ゴルフに吹かせた新風は、最後の最後まで爽やかだった。

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