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大桑暢之「とにかく勝ちたい」

前夜は死にそうな思いをした。途端に体が震えだした。何度も吐いた。汗が滝のように流れ、着替えても着替えても全身ずぶ濡れ。
風邪だろうか。
あまりの体調の激変に30分くらい、風呂場で放心状態。「あれは、ひょっとしたら気絶していたのかもしれない」と、当時の恐怖を振り返る。

しかし夜中のことだったから、たった一人で医者に行く気力もなく、ただ呻きながら寝るしかなかった。
「さすがに今日は、欠場したほうが良いかなと思ったけれど・・・」。

今大会は主催の延田グループが、昨年11月に行われた「マスターズGCドリームマッチ」の収益金を寄付してくださったことで誕生したイベントだ。

ご厚意は絶対にムダにしたくなかった。
朝方には震えもおさまり、どうにか歩ける状態まで回復した。
「だから頑張って来たけれど。絶好調なんてとてもじゃないけどいえる状態じゃなかった。それでこのスコアでしょう」と、本人も目をシロクロさせた3アンダーは4位タイ。

体調も万全なときは、少しのミスも腹が立つ。
それで、さらにボギーを重ねる悪循環も、この日はさすがになかった。
「・・・というか、最初から割り切っているから腹も立たない。余計な力が入っていないから、逆に良いんでしょう」と、苦笑した。

1975年2月7日生まれの32歳は、地元関西の名門・近畿大学出身。
2つ下の宮里聖志は、大阪桐蔭高時代からの後輩にあたるが、「今や立場も逆転してしまった」。
かたやツアー1勝の後輩に対し、チャレンジトーナメントや他の規模の小さなツアー外競技でも勝ち星のない大桑は、「とにかく勝ちたい」と、切実な思いを口にした。

大桑伸之
1975年2月7日生まれ、和歌山県出身。身長169センチ、体重75キロ。14歳のときからゴルフを始める。ゴルフの名門・近畿大学に進み、1997年にプロ転向。
今季は、ファイナルQTランク34位の資格でツアーに参戦。
趣味はガーデニング。

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