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三井住友VISA太平洋マスターズ 2020

姉ちゃんに追いついた! 香妻陣一朗がプロ8年目の初V

©JGTOimages
最終日のリーダーボードは、無観客試合がもったいないくらいに目まぐるしく動いた。特に、もつれにもつれた後半、「上りの4ホールは胃が痛くなるほど緊張した」。

だが、最後の逆転チャンスがかかった18番。勝負を決する香妻のイーグルパットは「緊張しないぐらいの近さ」。
230ヤードから、5Iで打った2打目が2段グリーンを駆け上がって入りかけ。スーパーショットで、ピンそば20センチをタップイン。通算8アンダーで、後続の結果を待った。

2つ姉の琴乃さんと、地元・鹿児島県鹿屋市の「めだかクラブ」に入塾した頃はまだ3歳。
「物心ついた時には、横峯家にいてゴルフをしていた」。
女子プロの横峯さくらさんの父・良郎さん主宰のゴルフ塾で腕をあげ、2012年の九州アマ制覇。日本アマでは3位に入り、松山英樹と「世界アマ」の代表にも選ばれた。

宮崎県の日章学園高校を出てプロ入り。
「すぐに勝てる」と思ったが、そこから8年かかった。
デビューから3年は、賞金ランクも100番台。
4年目にやっと初シードも、それから2年後の2018年には琴乃さんと、やはり”めだか育ち”の出水田大二郎の初優勝を見ながら、自身はシード陥落。
「ゴルフは、もういっかな…」。
翌2019年から始めた動画チャンネルでは注目を集めても、「自分は、勝てないんじゃないか?」。
ひそかに諦めがよぎったこともあったが、「やっぱりこうやって、ゴルフやってる以上、勝つまでぜったい辞めれない」。

1差の3位から出た最終日は、4番まで3つのバーディで逆転。
2差のトップに立ったが6番で、3打目を”池ポチャダボ”。
7番でもボギーを叩くと大混戦に。

でも、この日は強い風と凍える寒さ。
「そんなに、順位は落ちてない」と、自分を信じた。
「アプローチとパターでスコア作るのが自分のゴルフ」と、8番では10メートルのバーディで、すぐに立て直してV争いに食いついた。

土壇場のスーパーイーグルで、逆転フィニッシュでもスコア提出所のモニター前で「プレーオフもある」。ハラハラしたが、胃の痛みもやっと吹き飛ぶ歓喜の時はやってきた。

最終組のプレーを見届けると大声をあげながら、部屋を出た。
ペットボトルを手に、勝者を待ち構えた仲間の輪に飛び込み、まともに浴びた。
「これが水シャワーか、と。気持ちいい」。
待ちに待った、プロ8年目の初儀式。
「嬉しい気持ちと、やっと優勝できたという気持ち。長かった…」。
出水田と抱き合えば、もう感泣が止まらなかった。

宮里聖志、優作、藍さんに続く姉弟優勝も実現した。
琴乃さんもいち早く、会場にお祝いのメッセージを届けた。
無観客試合は残念でも、賑やかで心温まる優勝シーンだった。

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