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QT7位! 小林伸太郎は今年こそ、飛躍の年にしてみせる

合宿3日目には鈴木(左)とのラウンドが実現して、ますます張り切ってティグラウンドに立つ小林
宮崎県のフェニックス・シーガイア・リゾートを舞台に、今年3年目を迎えたJGTO主催の強化合宿は昨夏、千葉と岡山でも行われ、どの回も欠かさずに参加してきた“皆勤賞”が小林だ。
初年度の2013年。小林のお目当ては、ほかでもない。「フォースタンス理論」の廣戸聡一先生だった。東北福祉時代の2007年。日本アマを制した際には、すでに廣戸先生の存在を知っていて、実際に一度、面会を果たし、その教えに触れる機会はあったのだが、そのあとぷつりとご無沙汰していた。

「もう一度、お会いしたい。もっと深く教えていただきたい」。そう思い続けていたから、JGTOから送られてきた第1回目の実施要項の講師の一覧に、廣戸先生の名前を見つけたときは、小踊りする思いだったという。
「すぐに参加を申し込みました」。それだけに初回から、小林の勉強熱心さには、並々ならぬものがあった。

昨年のファイナルQTで、ランク7位に食い込めたのも、「この合宿に、毎年欠かさず参加させてもらったおかげ」と、小林は言う。「初年度は、QTでサード落ちをしましたけど、回を重ねるごとにひとつずつ確実にステップアップしてきている」と言ったが、それは講義を受ける小林の側にも講師のみなさんの言葉のひとつひとつをきちんと受け止め、かみ砕き、吸収する力があったからこそ。

小林自身も、「講義の内容を、きちんと拾えない人には、すべてがいい話しだなで、そこで終わってしまう可能性がある」と、言っている。合宿で得た知識や教養を、いかに自分のモノにして、さらには次につなげて応用していけるかどうか。
その点、小林には「合宿中に、ひらめいたものがあった」という。これまでのゴルフ人生を、がらりと180度変えるような、出会いもあった。小林は、廣戸先生の講義を受ける中で、JGTOの理事で、合宿の責任者でもあるツアー通算16勝の鈴木規夫が、自分と同じタイプの体の動きをする選手であることを知った。

「それからはもうべったりと、鈴木さんにくっついて教えてくれるようになるまでそばを離れなかった」と小林は笑う。熱い思いが、かつて“九州の若鷹”の異名を取った“レジェンド”の心を動かした。
一見、言い方はぶっきらぼうだが「あんな優しい人はいない。あんなによくしてくれる人もいない」と、ドライバーで250ヤードは飛ばすというスポーツ万能の母の手ほどきを受けて、10歳でクラブを握って以来、この合宿を通じて、親以外に初めて“師匠”と呼びたい人が、小林には出来た。

「スピン量が多すぎて、アゲンストで吹き上がるし、低い球を打とうとすると引っかける」と、小林は悩んでいたが、昨年のこの合宿への参加をきっかけに、それまで弱点と思っていたことを強みに変えることが出来たと言う。
「冬のゴルフが怖くなくなった。去年のファイナルQTでは、白山(白山ヴィレッジゴルフコース)の強い風の中でも、誰よりも良い球を打つことが出来たのも、そのおかげです」。

アマチュア時代は、ナショナルチームの一員として日の丸を背負った逸材も、「プロ転向後にコケてしまった」と、一度は跳ね返された分厚い壁。それを突き破るチャンスをようやく掴み、いよいよ今年は本格参戦の春を迎えようとしている。
「自分の力だけではここまでは来られなかった」と、小林は言った。
「昨年のQT7位も、合宿に参加させてもらったおかげ」と、繰り返した。「自分が今まで不利だと思っていたことも、武器になると分かった。鈴木さんからのアドバイスだからこそ、安心して聞ける」と開幕に向けて、今年3度目の“宮崎合宿”でも小林は、恩人から心強い励ましの言葉を受けた。
「伸太郎はスロースターターだから。追い込まれなくちゃ出来ないタイプだから」とは、鈴木自身もそんな“教え子”と、自分が重なる部分があるのか、妙な説得力に満ちていて、「今年は崖っぷちで追い込まれるんじゃなくて、前半戦からボチボチと稼いでいけよ」。

その言葉にますます新シーズンへの闘志を燃やしながらも小林は、同時に大きな安堵感に包まれていた。「鈴木さんに“ボチボチいけよ”と言われたときです。ああこれ以上、自分のゴルフに何も足したり、引いたりしなくていいんだ、と。今のゴルフで勝負していっていいと、言ってくださっているんだと思えたんです」。
さらに自信をつけた、3度目の宮崎合宿。「JGTOゴルフ強化セミナーin宮崎フェニックス・シーガイア・リゾート」は、「オリンピックを目指して」とのサブタイトルがついている。アマチュア時代の経験から、日の丸を背負って戦うことの厳しさも、誇らしさも小林は、すでに十分に分かっているつもり。
「日本の代表として、誰でもいいからあそこで勝ってほしい。そして、そこで自分も何か少しでも、貢献できることがあればいいなと思いますね」。

アマチュア時代から“いいとこ取り”が上手かった。「自分でいうのもなんですが、昔から器用でエルスのスイングを真似したり、人のいい部分を取り入れるのは得意だった」という28歳。「でもこれからは真似するだけじゃなくて。自分流を見つけなくちゃ。自分だけの世界を作らなくちゃ」。鈴木や、前日3日に特別講師として駆けつけた青木功もまたしかり。強烈な個性で“自分流”を貫いてきたレジェンドたちを見習って、2015年こそ飛躍の年にしてみせる。
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