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〜全英への道〜 ミズノオープンよみうりクラシック 2008

山下和宏はメジャー切符よりも…

この日初日は12時55分に1番ティからスタート。ホールアウトした18時すぎは、どんよりと雨模様も相まって、あたりはすっかり薄暗かったがそれにもかかわらず、たくさんのギャラリーに囲まれた。
「山下くん、ナイスラウンド!!」。
口々に声をかけられて、嬉しそうにつぶやく。
「今日は兵庫、京都、大阪…あちこちから応援に来てくださっているんですよ!」。

今週は、自宅のある大阪市内から自宅通勤中の山下が、駆けつけた大勢の地元ファンの前で4アンダーの首位タイスタートを切った。

1番で、あわやOBすれすれのミスショットを打ちながら、どうにかパーでしのいだが3番、4番で連続ボギー。
「あそこから、よく持ちこたえた」。
7番から3連続バーディを奪って、落ち着いた。
「これから、安定走行で行こう」と、決めたのが良かった。

14番で、残り169ヤードの第2打を6番アイアンで50センチにつけてバーディを奪うと16番パー5で、25ヤードもあるイーグルパットをねじこんだ。
「まるで、グリーンの端から端まで打つような…。それが、入っちゃったんですよ!」。
ド派手なプレーで、最後までついて歩いてくれたギャラリーを沸かせた。

先週、2日間競技の奈良県オープンで、通算12アンダーで優勝を飾ったばかり。
好調の秘訣は、先月の5月15日に待望の第一子が誕生したことだ。
長男の子育てに追われる妻を見ていてつくづく思う。
「俺も頑張らなあかん!」。
夫を気遣って、夜中隣の部屋でひっそりと授乳する妻の様子を見ればなおさらだ。

「ミルク代もおむつ代も、俺がゴルフで稼ぐしかないんや!」。
そんな思いを今週もコースにぶつける。

チャレンジトーナメントは昨年から規定が変わり、同ランク2位〜7位までの選手に翌年のツアー前半戦の出場権が与えられることになったが、同ランク6位の兼本貴司がレギュラーツアーでシード復活を果たした。
その繰り上がりで権利を得たのが、同8位の山下だった。

98年のプロ転向後、今季初の本格参戦を前に決めた目標は「4日間のうち、1日はその日のベストスコアをマークすること」。
今週、さっそくクリアして幸先の良いスタートに、思いはさらに広がる。

今大会の上位4人には、全英オープンの出場権が与えられる。
本戦直前に知人らと「もし入れたら、誰をイギリスに連れて行こうか」という話題で盛り上がったが実は山下には、初のメジャー切符よりも最優先事項がある。
「僕には、ベスト10入り出来たほうが嬉しいかも。全英よりも、初シード入り出来るよう頑張りたいというのが本音なんです」。
正直な胸の内を明かした。

山下和宏(やましたかずひろ)
1973年11月5日生まれ、大阪府出身。
中学時代は野球少年。しかし、特にチーム戦のプレッシャーに弱い自分に限界を感じ、地元の大阪府立島上大冠高進学と同時にゴルフに転向。自宅近くの河川敷ゴルフで腕を磨いた。
当時、全盛期のジャンボ尾崎に憧れて、卒業と同時に兵庫県のザ・サイプレスゴルフクラブの研修生となり、98年にプロ転向を果たした。
昨年のチャレンジトーナメントランク8位は、今季前半戦の出場権が得られる上位7人に入って本格参戦。身長175センチ、体重70キロ。

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