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国際オープンゴルフトーナメント 中日クラウンズ 2000

「打つ前に、ミスを整理していなかったせいで、ひとつで済むボギーを、2つもしてしまった」田中秀道

詰めかけた観客が鈴なりになった1番ティグラウンド。田中秀道はひとしきり風を読んだあと、アドレスをした途端、間髪を入れずティショットを打った。
田中のショットを目に焼き付けようと凝視していた多くのファンは、一瞬のできごとであっけにとられ、静まりかえってしまった。
そのスキをつくように、さっさとコースに向かって田中が歩き出すと、にわかにざわつき、田中の背をこんな声が次々と追った。
「もう、打っちゃったの?」「え〜、速すぎてオレ見てなかったよ」「アドレスした時間て、あったの?」
ほかでもない。これは、田中の風対策だ。この日は、秒速10メートルを超える春の嵐が、選手たちを惑わせた。
しかも、「ここの風は、呼吸をしている。そして、たまに息継ぎをする」(2位タイの日下部)という、ひねくれた和合の風に田中はアドレス時間を極端に短くすることで対抗した。
「今日は風の変化が早過ぎました。風を読んで、打つ方向を決めて、アドレスを決めている間に、もう向きが変わっている。
だから、たとえば『右からの風』と読んだらすぐに構えて打つ。構えたらもう迷わないで、風が変わる前にすぐ行く。それが今日は12番まではうまくいきました」(田中)。
しかし、12番パー4で、ピン上2メートルを沈めて通算5アンダーとしたあと、13番パー3では「風の計算ミス」をして、グリーン奥へ打ちこんだ。「和合ではよく起こること」と、気持ちを切り替えたつもりだったが、次のアプローチも寄せきれずボギー。
集中力が、一瞬、途切れた。14番パー4では、セカンドをグリーンショート。1メートルのパーパットもはずして、「ひとつでいいのに2つもボギーを打ってしまった。動揺は、グリーン周りに行く前に整理しとかないといけないのに…」と反省しきり。
通算2アンダー、5位タイで迎える「明日以降は、ミスを引きずらない。しなくていいボギーをしないこと、を肝に銘じて念願の地元優勝を飾りたい」と力をこめた。

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