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ダイヤモンドカップゴルフ 2010

片山晋呉が「最終日、最終組で見せつける」

最終18番で握りしめたガッツポーズは2.5メートルのパーパット。「悪い流れを断ち切った」。それは前ホールの17番。583ヤードのパー5で痛恨のボギーを打った。
ラフからラフを渡り歩いて、奧からのアプローチも寄せきれなかった。

「まあ、そういうこともあるのがゴルフ」と口では言いながら、次も連続ボギーでは、腹の虫もとうてい治まらなかっただろう。
「たとえ17番でパーが取れていたとしても、18番のボギーのほうがよっぽど嫌」。
明日につなげた渾身のパーセーブだった。

首位とは6打差ついてしまったが、昨年11月のブリヂストンオープン以来の最終日最終組。
「今日のようなゴルフが出来れば見せつけられる。プレッシャーをかけられる」。
逆転Vを視野に入れた。

今週の会場の狭山ゴルフ・クラブは「すべての大会を振り返ってもNO.1」。
グリーンの硬さも、速さほどよく、「ラフからでも技術があれば、止められる」。
たとえば、15番パー4だ。
右のラフから握った9番アイアンは、「普通のショットなら止まらない」と自画自賛。
「上にドロップさせて、最後にゆっくり落ちる感じを出していく。最高の技術が生かされる。とてもフェアなセッティング」。

メジャー舞台を知り尽くした男も認めた。「こういうコースで毎週やったら、日本選手のレベルは確実に上がるはず」とまで言い切った。世界水準といっても良いコースセッティングが、片山の挑戦意欲をいっそう掻き立てる。

「ただ飛ばせばいいってもんじゃない。持っている引き出しから吟味して考えて、出したものが成功すれば、流れが作れるセッティングです」。
そう言いながら、本人の飛距離も十分。
たゆまぬ鍛錬もさることながら、その一番の要因は道具の工夫だ。

46.5インチのドライバーは片山本人のアイディアで、シャフトにグリップ側から順に緑、黄とシルバーのカラーを施してある。
「僕は長いクラブを持つと、ボールが小さく見えてしまう」。
苦手意識を克服するために、視覚の錯覚を狙ったそうだが効果は抜群。
「本当に46.5インチもあるの?と言いたくなるくらい。長さを感じさせずに握れる」。
長尺シャフトでも、持ち味の正確性を損なわず、かつ遠くに飛ばせるようになったことで、いっそうマネジメントがしやすくなった。
多彩な技に、飛距離が加われば、鬼に金棒。

「コースに来るのさえ嫌だった」と、振り返るのは昨シーズン。4月のマスターズで日本人最高の4位につけて燃え尽きた。
目標を見失い、ついにひとつの勝ち星もないまま終わったが、今ではそうやって道具やスイングの試行錯誤を重ねることが「楽しくて仕方ない」と無邪気に笑えるくらい、精神面の回復も著しい。

今季になって、復活の兆しはすでにあって、先の日本プロでも連日の優勝争い。
しかし、「あのときは、揺れる心が少しあった」と打ち明けた。
あまりに勝ち星から遠ざかっていたブランクに、「勝つにはここが足りない、というのがいくつか見えてきたりして」。
いまひとつ、自分を信じ切れない部分があったというがここに来て、「やっとパズルが組み合わさって、本当の意味で前向きになってきた」。
さらにそれを決定的にさせてくれたのは、この人の一言だ。

予選2日間を共にした中嶋常幸。大会最多は4度のVに、「晋呉は、まだだろう?」といたずらな笑みで言われては、黙っておれない。
「勝ちますよ」。不敵な笑みで答えてみせた。

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