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マイナビABCチャンピオンシップ 2009

石川遼は2位タイに

初の連覇達成に向けて、準備は整った。最終18番は、525ヤードのパー5でなんと第2打の残り距離はわずか165ヤードというティショットを放ち、18歳のディフェンディングチャンピオンが確かな手応えを掴んだ。

まだ2日目の時点で、翌日にあえて「最終組で回る」ことをこの日の目標に据えたのは、「ある意味、今日の自分に火をつけるための口実だった」。
そのためにも首位とは3打差、また2位タイの2人とは1打差の通算6アンダーで迎えたこの最終ホールのイーグルは必須だった。

前日初日は左バンカーに入れて、そのルートでは「2オンは難しい。今日はど真ん中に打ちたい」と、気合いが入っていた。

先週から取り組んでいる「スイング改良」は、「トップのときの体重の位置は右足のつま先よりなのか、かかと寄りなのか」「トップのときの重心の位置は、高いほうがいいのか低いほうがいいのか」。

この日も、常に試行錯誤の中でのラウンドだったが、「徐々に良くなってきて。最後には、ひとつ掴んだような感じで上がれた」と、大きく頷く。

それにしても、本人にとっても、思いがけないビッグドライブだった。
「無理矢理に飛ばそうと思ったわけではないけれど、むしろそういうときのほうが、意外と飛ぶこともある」。
それは、今季4勝目をあげたやっぱりホスト試合のコカ・コーラ東海クラシック最終日にダブルボギーを打ったあと、すぐにイーグルを奪い返した15番のティショットで、340ヤードを記録したときの感覚と似ていた。
「アドレナリンが出て、スムーズに体が回って、ヘッドスピードも出ていた」。

今まではつま先側に乗りすぎていた体重を「右足のかかと側に乗せていきながらバックスイングをする感じで行く」と心に決めたら最後、あとは無心で振り抜いた会心の一撃は、思いがけずフェアウェーを突き抜けて、右のラフへ。

それでも、本人はそんなに飛んでいるという実感もなく、セカンド地点に向かった石川は、それより手前のフェアウェーにあった、やはり同組の飛ばし屋の小田龍一のボールを自分のそれと、勘違いしたほどだった。

「あれだけ飛んで嬉しかったけれど。フェアウェーにあればもっと良かったかな」と照れ笑いで8番アイアンを握り、ピンの奧から10メートルのイーグルトライ。

惜しくもカップのわずか右に外れ、3日目に最終組で回る目標は消えたが、タップインのバーディフィニッシュに、「ジャストタッチで最終日に向けて、徐々にならしていく」と話していたABC名物の高速グリーンの攻略も、2日目にしてすでに完璧だった。

前半の9番では、絵に描いたとおりのバーディも奪った。
7メートルのチャンスは「カップ2つ分くらい、気持ちフックは手前10センチくらい手前に打つイメージ」と読みきって、「さらにそこから伸びてくれた」と、ジャストイン。
前日初日の4アンダーは、ティショットにも安定を欠いて不満も残ったが、「今日の3アンダーは100点に近い。ストレスがまったくなくて、やるべきことが出来たラウンドだった」と、今季5勝目に向けて着々と歩を進める昨年覇者は、それでもなお「明日終わった段階で、ようやくかすんで見えるくらいの位置にいられたらいい」と、冷静だった。

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