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VanaH杯KBCオーガスタ 2009

池田勇太が今季2勝目

23歳が、17歳の壁になった。池田勇太が石川遼を封じ、36歳の今野康晴を倒した。2打差の4位タイからスタートした最終日は「行けるもへったくれも、いつの間にか優勝争いしてたって感じで」。
池田流に言えば、前半の9ホールは「ペラペラだった」。つまり、「パットも入らなかったし、ショットもピンに絡んでなかった」ということだ。

だが9番で絶好のイーグルチャンスを外し、専属キャディの福田央さんと「まあこれからだね」と話し合い、11番で4メートルのバーディパットを決めた途端に「ゾーンに入った」。

そこから怒濤の5連続バーディは、「波に乗ったら俺、何もかも忘れちゃうんだ」と、あとからその内容を思い出すのにもひと苦労したほどだ。

一度、勢いがついたら止まらない。たちまち石川を捉えた。日頃から「刺激になる」存在は、「だけど今日の遼は、俺のはるか後ろで」。つまり、目指す相手は2つ後ろの組で、だから池田は同じ組の今野康晴をターゲットにしたという。

「今野さんは前半から良いゴルフをしていたから。前半だけで、3バーディの1イーグルで“ま〜あ、よう入るなあ”と思って見ていたから。とりあえず、今野さんとやらないとと思った」。

真っ向勝負の激しいバーディ合戦は、18番ホールまでもつれた。17、18番で足並み揃えて連続バーディ。通算21アンダーで並んで、若きヒーローの帰還を待った。

その間、約1時間。体力温存のため練習は控えたが、「冷房の効いているところにいくと、出たくなくなる」と、クラブハウスには戻らなかった。18番グリーンサイドで腰に手を当て、仁王立ちして最終組の石川を見届けると、集中力を切らすことなく、プレーオフ2ホール目にバーディで今野を下した。

今年6月の日本プロでツアー初優勝をあげて、翌月には全英オープンにも出場した。
初のメジャー舞台で得たもの、見たこと、成長のきっかけになったこと。それらすべてを順序だてて丁寧に、ときに饒舌に説明する石川とは対照的に、池田は「そんなの自分では分かんないよ」と素っ気ない。

「それなりに手応えをつかんで帰ってきて、きっと自分では、気づいてない部分で出てるんだろう。意識していなくても、プレーや私生活に出てるんだろう」と、まるで人ごとのように語る一方で、帰国直後のセガサミーカップで痛めた左太もも裏の怪我の治療を理由に、「先週の関西オープンは、休ませていただいて」と、礼儀正しく頭を下げる律儀さを持っている。

仲良しの報道陣を呼び捨てするふてぶてしさの裏に、「苦労している子供たちに少しでも役立てれば」と先の日本プロで得た優勝副賞を、母校の東北福祉大の地元・仙台の福祉施設に寄贈する優しさを隠している。

爽やかな17歳とは一見、何もかもが対照的な23歳が、石川の今季3勝目を阻止した。
これで獲得賞金は7000万円を超えて、勝ち星で並ぶ石川と、片山を抜いてランク1位に躍り出た。

2位の石川とはわずか74万2661円差に「遼VS勇太」。外野は早くも史上最年少の賞金王争いの構図を描いて、つい胸躍らせてしまうが本人は、「まだ試合は半分も終わったばかりじゃ、わかんねーべよ。これからまたすぐに誰かに抜かれるよ」。

そう、鼻で笑ったそばから「いまは、普通にやっていればまたすぐに優勝争い出来そうな気がするよ」とつぶやいた。
初優勝からわずか2ヶ月の今季2勝目には本人が一番目を丸め、「こんなに早く勝てたことで、自分のことが楽しみになってきました」と、この先シーズン後半戦に思いを巡らせた。
  • 大会主催の九州朝日放送の権藤満・代表取締役社長から受けた感激の優勝トロフィー
  • 2日目に日没サスペンデッド、3日目は早朝から競技を再開するなど、ご苦労をおかけしたボランティアのみなさんにも感謝の言葉を!!
  • 専属キャディの福田さんと、親衛隊から天然水素水「VanaH」を頭から浴びせかけられ、「つめてえっ。でもVanaHはいつ飲んでもうまいっ」と池田

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