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アンダーアーマーKBCオーガスタ 2006

手嶋多一「他の人に任せます」

大会主催の九州朝日放送㈱、権藤満・代表取締役社長から受け取ったKBC杯
手嶋を見ていると、むしろ他の選手がプレーしているときのほうが、表情豊かに感じるときがある。19歳のドンファンのショットに、「ほぉっ」と感心したときの顔。
同じ最終組の増田がバーディチャンスを決めれば、まるで自分のことのように「よしよし」と嬉しそうに頷いている。

逆に外せば、これまた自分のことのように、残念そうに顔をゆがめていたりする。

では手嶋自身のプレーのときはどうかといえば、その表情はめったに変わることがない。
どんなときも、感情をほとんど表に出さない。
闘志は内に秘めたまま、むき出しにしない。
怒りや諦め、などといったマイナスの感情はなおさらだ。

それは、プロ人生13年で確立した自分なりの「スタイル」。

それでもデビューしたてのころは、「わりとクラブに当たったり、怒ったりしていた」という。
しかし、そうやって外に発散することで、気持ちが切り替えられるタイプではなかった。
「出せば出すほど、また次のホールでもOBを打ったりミスをする。スコアに響く」。
八つ当たりしたことで、かえって自己嫌悪に陥って、悪循環にはまるタイプ。

そのうち、いっさい感情を出さなくなった。
「コースで嫌な振る舞いをするのは一切やめよう」と、心に決めた。
そして、そうしたほうが自分は心地よくプレーできることが次第に分かってきたという。

あえて強気な発言をしたほうが、テンションを上げて戦える、という選手がいる。
若手たちの多くが、感情やライバル心をむき出しにしてプレーする。
いろんなパフォーマンスで、ギャラリーを楽しませようと選手もいる。

そんな中にあって、「ただコースとの戦いに徹してプレーするほうが僕は好き」という手嶋には淡々として見えるからだろうか。
「物足りない」とか言う人もいるようだ。
人の良さが、勝ち星にストップをかけている、とも・・・。

それでも「僕は我を出してやって、上手くいった試しがないから」と、自分の信じたそのやり方を貫く頑固さがある。
手嶋には、古くからのファンが多いが、コースでの紳士的な振る舞いが、人をひきつけてやまないのだろう。

この優勝で、賞金ランクは7位に浮上。
上位選手が次々と、奪・賞金王を宣言する中で笑っていった。
「そういうのは、他の人に任せますよ」。
しかし、前日3日目に「口に出すと、緊張してしまうから」と、優勝宣言はあえて避けた手嶋のことだ。
普段から、本音をめったに言わないから、これもやっぱり作戦のひとつなのかもしれない。

  • プレー中に、感情を表に出さようにしている、という手嶋はガッツポーズもやっぱり控えめ?!
  • 大会特別協賛㈱ドーム、安田秀一・代表取締役ほか役員のみなさんと、アンダーアーマークリスタルトロフィーを囲んで。

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