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ABC チャンピオンシップ ゴルフトーナメント 2005

桑原克典「金メダルを取る」

桑原にとって、このABCチャンピオンシップは思い出深いトーナメントだ。
川岸良兼と優勝争いを繰り広げ、2位に入った99年大会。練習日の26日(火)に、長男・一貴くんが生まれた。
2003年には、やはり練習日の火曜日(28日)に、次女・舞衣ちゃんが誕生。

「舞衣」という名前は、ABCの夕焼け空を眺めていて思いついた。
「こんなにきれいな秋の空を、舞うように伸び伸びと生きていってほしい」そんな祈りをこめて、命名した。

「だから、すごい思い入れがある」というこの大会で、今年は復調のきっかけをつかめそうな気配だ。

この日初日はショット、パットともに安定し、ボギーなしの6アンダーをマークしたが、特にグリーン上には目を見張るものがあった。
前半の14番、4番、6番でいずれも8メートルの長いチャンスが決まった。
最終9番では、なんと20メートルのバーディパットをねじこんだ。

昨年、ここABCゴルフ倶楽部のグリーンは、全面ニューベントにリニューアルされて面積も広くなり、9ホールで2段、3段状に改造されるなどアンジュレーションも複雑になった。
新しく生まれ変わったグリーンで、今週から握った36.5インチの中尺パターが狙い以上の威力を発揮している。

以前は、丈の長いパターを使うなど「オジサンぽいし、悩んでいることが周囲に丸分かりで恥ずかしい」と、敬遠していた部分があったが、今季のベストフィニッシュはミズノオープン(6月)の17位。
賞金ランクも84位と低迷が続き、「パットも思わしくなかったし、行き詰ってた」。
95年以来、初めてシード落ちの危機を迎え「背に腹はかえられなくなった」。
スランプ打開のためもあって、この日初めてバッグに入れたのだ。

マレット型のヘッドの重さを利用して、「まるでハンマーで打ってるような重い球が打てて、ボールがレールの上を走るように、ことごとくラインに乗って転がっていく」。

好感触を手に入れて、「“これを入れてやろう”とか。チャレンジする楽しさが出てきた」天性の勝負魂も、蘇ってきた。

36歳。トレーニングや練習法、体力的にもこれまでと同じやり方では通用しない、という微妙な年代に差し掛かるころ。
「この時期を乗り越えればまたきっと、新しいゴルフ人生が見えてくる」とシーズン年頭から新しいやり方を模索しながら、歯を食いしばってきた。
その成果がようやく、見えてきた。

今週、会場からそれぞれ誕生日を迎える2人の子供たちに電報を贈った。
長男・一貴君にはその礼とともに、こんなメッセージを受け取っている。

「パパ、金メダルを持って帰ってきて!」。
もちろん、一貴君がいう金メダルとは、7年ぶりのツアー通算3勝目のこと。
家族との思い出がいっぱい詰まったこのコースを、今年、復活の舞台としたい。

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