Tournament article

三井住友VISA太平洋マスターズ 2002

「これがプロの習性ってやつ」

6月の復活Vを契機に、常勝時代のトミー・中嶋が復活

「これが、プロの習性ってやつかな…」
そういって48歳は、照れくさそうに笑った。

今年6月に7年ぶりの優勝を上げたとき、「俺も年だし、もうこれで、勝つことは一生ないだろう」と思っていた。
だが、一時は黄金期を築き上げた人間の血は、いったんざわめき始めると、そうおとなしく、おさまっているはずもない。
戦いに挑むたび、ますますモチベーションは高まって、中嶋は「また勝ちたい」と強く願うようになったという。

そしてそんな思いは、長男・雅生とそう年も変らない若手選手たちとラウンドするときほど、いっそう顕著にあらわれた。
「自分の息子のような選手たちと、同じ舞台で戦える」
そう思うと、楽しくて仕方なかった。
「フレッシュな彼らに元気をもらっている感じ。刺激を受けて、自分もまだまだやれる、もっと頑張れると思えてくるから、不思議だね(笑)」

この日の相手も、アマチュア時代に豪州トーナメントで優勝という経歴を持つ21歳のアーロン・バデリーと、今季米ツアーの初シード権を手にした田中秀道。時代の先端をいく若手2人だ。

彼らに2打差首位からスタートし、一時は、3打差つける展開も、「彼らが、このままあっさり、崩れ去ることなどありえない。このまま自分が、楽に逃げ切れるはずもない」
と、途中一度も、楽観などしなかった。

予想どおり、上がり15、16番の連続バーディで、田中が1打差に詰め寄ってきたが、
「彼の実力なら当然のこと。それより、自分がどれだけいまできる最高のことをやりとおせるか」
と、弱気も悲観も一切みせず、常に前向きであり続けた。

そんな姿勢は80年代、“常勝時代”の、トミーそのもの。

スイング改造とパットのイップスに苦しみ賞金シード落ちの屈辱を味わった2000年シーズン、棄権1回を含む8試合連続予選落ちの「ドン底」から這い上がり、再び、強い中嶋が戻ってきた。

関連記事