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全日空オープン 2001

「とにかく自分のペースを守ろう」

出だし連続ボギーにも、林根基は耐え抜いた

 2位に4打差つけて、首位に立った前日3日目。
 優勝のカギは何か、と聞かれ林はこう答えている。
 「勝つためには、運が大事」
 だが、最終日。スタートホールでいきなり、不運に見舞われた。
 6番アイアンで打った第2打は、フォローの風に乗って、グリーンオーバー。ボールは大きな木の下に転がり込んだ。しかも、ピンに向かって左の木の根元。まともにスタンスも取れない状況だ。
 しばらく思案した林は、おもむろに、グリーンに背を向けた。
 そして、幾度か振り返ってピン位置を確認し、右手に握ったサンドウエッジのフェース面を合わせて向き直ると、背を向けたまま、思い切って右手を後方に振り下ろした。
 後ろ向き、片手打ち。不安定な姿勢でのアプローチ。
 大ピンチにも、「こういう練習も、よくするんだよ」と、林は顔色ひとつ変えずにトライした。
 球は程よいスピードで、ピンに向かって真っ直ぐ転がっていくかに思えた。
 だが、次の瞬間、林の顔が見る見る青ざめた。
 ボールは、グリーンカラーのスプリンクラー部分に当たり、カーンと音を立てて、大きく跳ねた。15メートルもの、パーパットが残ってしまった。
 出だしのボギー。
 尾を引いたのか、次の2番も6メートルを3パットして、連続ボギーの発進に不穏な空気が漂った。2位との差も、一挙に縮まる。
 「今日は運がないのか・・・」
 一瞬、気持ちが萎えかけたが、それでも林は、「とにかく自分のペースを守ろう」と心に決めた。
 「他の人にチャンスを作ってしまったかもしれないが、僕にだってまだチャンスはあるのだから」

 連戦の疲れだろう。先週から、腰の左側が痛かった。
 「ティアップした球ならいいが、低い球を打ち込むとき、インパクトで痛い」と、自慢のパンチショットにも冴えを欠いた。
 痛みにも、耐えながらの戦い。
 「ずっとパーで頑張って、チャンスがあれば、入れるイメージ。長いパットは2つで入れる」そうしてつかんだ12番からの3連続バーディだった。

 これで、7月のアイフルカップに続く日本ツアー2勝目に、「僕は日本が大好きだから、本当に嬉しいなあ」と満面笑みを浮かべてから、「今年、日本の残り試合、全部に勝ってもいいね。なんて、冗談だよ」と茶目っ気たっぷりに、両手を振った。

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