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全日空オープン 2000

アウトスタート最終組の石垣聡

暗闇の中、最後のダボパットを渾身の力で沈め、
「心の目で読みました…」

 この日、午後アウトスタート最終組(12時43分スタート)の石垣聡、山本昭一、高橋成司さん(アマチュア)ら3人を迎える18番グリーン。夜のとばりが下り始め、辺りは白い靄に包まれている。
 視界はほとんどゼロ。お互いに、かなり近寄らなければ、その表情は伺えない。
 とうとう、設置された7つのうち、3つのライトが灯された―。

 この日、昼ごろから立ちこめはじめた霧で、選手たちの視界は遮られ、13時58分から 14時11分の13分間、一時、競技も中止された。
 いったん霧は晴れ、プレー再開となったが、16時ごろから再び霧が発生し、夕暮れの到来とともに、ますます視界は悪くなっていった。

 この日の日没は、17時30分ごろ。
 それまでに全組が競技を終了できるか、微妙な状態だった。
 最終の18番セカンド地点には、コース中のフォアキャディが集められた。
 万一の場合に備え、グリーンを照らすライトは、ギャラリースタンドに。
この日のうちに全組がホールアウトできるよう、準備万端で、最終組がやってくるのを待ったのだ。

 最終組の石垣は、通算2オーバーで18番を迎えたが、ティショットは左のラフ。
 木が邪魔になって、かなりかがまなければ打てない状況だった。
 「ボールの場所もよく確認できない位置で、トップした」
と、ボールはさらに林の中へ。
 「もうこうなったら、横に出すしかない」と、隣の14番フェアウェーにいったん出して、そこからの第4打目はグリーンオーバー。再びラフに潜りこむ。
 5打目のアプローチは、寄りきらず、ピンまで2メートル…。
 これをはずせば、トリプルボギー。通算5オーバーで予選落ちだ。
 「そんなので落ちたらたまらない」

 ライトの下で石垣は真剣にラインを読む。2度しきりなおしもした。
 ヒヤヒヤのダボパット。ボールがカップに沈むと、肩で大きく息をして、石垣は両手で大きく万歳だ。
 そして、優勝したときするみたいに、“予選通過”の決め手となったダボパットのボールを、最後まで見守ってくれたギャラリーに投げ込んで、予選通過の喜びと、第2ラウンドが、無事、この日のうちに終了できた安堵を表現した。

 最終組がホールアウトした時間は、17時57分。

 「17番ホールくらいからすでに辺りは暗くなりはじめ、ショットの行方や、ピン位置もパットのラインもまったく見えなくなりました。
 最後のパットは、“心の目”で読みました」と石垣。
 長い1日を終えて、ホっと息をついた。

  • 石垣(左端)はプレーを終えて、同組の山本、アマの高橋さんと握手。

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