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PGAフィランスロピー 2000

プレーオフ5ホールの熱戦

本戦最終組のホールアウトを待つ間、島田正士、三橋達也、高橋竜彦の3人はめいめい練習グリーンで黙々と球を転がし続けた。
競技が終わって、3人に声がかかった。カートでティグラウンドへ向かう。プレーオフは、18番ホールの繰り返しだ。

そのひとホール目。島田正士が15メートルのバーディパットを沈めて先制パンチ。三橋達也は1メートルのバーディパットを入れ返し、パーに終わった高橋竜彦が早々に姿を消した。

「あの長いのは、上ってすぐに下るパット。タッチさえあっていれば、そんなにストロークしなくていいラインでした」(島田)

2ホール目から島田、三橋の一騎打ち。島田は、第2打をピン右4メートルに。三橋は同6メートルだ。
先に、三橋がバーディトライに成功し、力強いガッツポーズも飛び出した(=写真)。それを見届けた島田も、がっちり沈め両者バーディで決着がつかない。
「2ホール目のパットは、本戦のあがりホールのときのラインとほぼ同じでした。本戦のほうがもう少し長かったけど、ラインははっきりわかっていたので、入るとは思っていました」(島田)

3ホール目は、両者パーで分けた。
続く4ホール目。島田にチャンス到来だ。バーディパットはピンまで1メートルに。後から打った三橋の第2打は手前に8メートル残り、ギャラリースタンドから「決まった」との声も飛び出す。
三橋はバーディパットを寄せきれず、80センチのパーパットを残した。それを見届けた島田のわずか1メートルのバーディパット―。
「ちょっと切れる、と読んだパットがまったく切れなかった。でも、それは思ったとおりに打てたパットだった。だからはずれても仕方ない、と思えた。ショックは残らなかった。それより、なかなか決まらなくていつまで続くのか、と思った」(島田)

息詰まる展開に、変化が起きたのは5ホール目。
三橋は、ピン手前7メートルのバーディパットを1メートルに寄せて、島田のアプローチを待った。島田は第2打を、グリーン左のカラーにはずしていた。ピンまで5メートルのパターでの第3打。
「三橋さんは、そのパーパットを絶対に入れてくると思った。自分もとにかく入れなくては仕方ない、と思った。プレッシャーはあまり自分に与えずに打った。ラインはまったく読めなかった。とりあえず、まっすぐ行ってくれればいい、と思った」(島田)

島田のアプローチは、カップに吸いこまれた。島田のバーディで、とうとう決着がついた。
三橋と握手を交わしたあと(=写真)、ギャラリーに請われるまま島田は、いったんはバッグにしまいかけたウィニングボールをスタンドに投げ入れた。
そのそばで、ぐったりと座りこんで、三橋が言った。
「勝ちたかった。いや、これは“勝ち試合”だった。勝たなくてはいけない展開だった。勝たなければ意味がない。2位はなんにも出ないんです。2位じゃ、どうにもならないんです」。その目の前では、島田の優勝インタビューが続いていた。
「2年シードが取れたことが、とにかく嬉しい―」その島田の声を背中に聞きながら三橋は、18番グリーンを下り、クラブハウスにむかって歩いていった。

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