1番ミドルで、6メートルのパーパットを決めると、「自分でいいプレーをしたなと思ったら、自然と出る」という派手なガッツポーズが飛び出した。静かに、ペースを一定に保ったプレーのデビッド・イシイと対照的。
　3番で、デビッドがボギーで1ダウンとすると、勢いにのって、4番で10メートルのバーディパット。5番では第3打のアプローチがあわやカップインのＯＫバーディ。６番はイシイのボギーで４連続アップだ。
「序盤で４アップして前半は押せ押せムードだったけど、１４番でドライバーを持って変になった。毎回ここでは曲げているので、明日の練習と思って持ったんです。バフィーでパーでもいいとは思ったんだけど…」

その間にイシイに８番と１２番をバーディで取り返されて、貯金も２アップに減っていたが、１４番のボギーで、その差は１アップとさらに縮まってしまった。
「マッチプレーは難しい。奥が深い」と谷口は思ったという。
１５番でバーディを奪い、ふたたび２アップと差を広げたものの、１６番でまたイシイがバーディを取り返し、１アップ。
残りは２ホール。１７番のショートホールをオナーのイシイが左に切られたピンに対してグリーン中央に乗せる手堅いショットを放つと、谷口は「僕も真ん中狙い、と思ったけど、思いきってピンを狙いました」という会心のショット。上り２メートルの絶好のバーディチャンスだ。だが、そのパットはカップのフチで止まりバーディならず。

勝負は最終１８番にもつれ込んだ。

その１８番。イシイのティショットは大きくスライスして右の林の中に深深と入って行く。谷口も疲れからか、右に曲げたが、ラフ。イシイのリカバリーショットは木に当たり脱出ならず。３打目でやっと林を脱出するも、まだグリーンまで５０ヤードほど残してしまったイシイは４オン。
一方の谷口は６メートルに２オン。谷口のバーディパットがカップのフチに止まったところで、イシイからＯＫが出て、谷口の２アップで決着がついた。
「３回戦の湯原さんとの対戦のときも追いつかれて負けると思った。１８番で渾身バーディは三菱ギャランで初優勝したときよりも嬉しいバーディだった。明日も３６ホールでは途中５アップしていても追いつかれることもある。１アップでも勝てればいい。たくさん取りたいとは思わないが、徹底的にボギーを打たないようにしてバーディを重ねてゆきたい。負けないという気持ちを持って、ぜひ優勝したい」
飛ばしやとして知られる小山内護に対しては「セカンドを先に僕が打つことになるから相手を意識せずやれていい。そのほうが気楽にできる。いいアイアンショットを打ってプレッシャーをかけたい。３６ホールで１０アンダーぐらいのペースなら…。そういうゴルフなら負けない」
と、谷口は自信をうかがわせるコメントで締めくくった。

• 谷口 徹