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祝V3。岩田寛の世界観

ヒロシの貴重な笑顔©JGTOimages
V後の第一声は「このあとスピーチがあるので。そのことで、頭が一杯」。
いざ、カンペを頼りにスタンドマイクでたどたどしく、「もう3回目なんですけど慣れなくて。暖かく見守ってください」。

一見、わかりにくいが凄く喜んでいる。
6年ぶりのツアー通算3勝目を逆転で飾った岩田寛は「久々の優勝で泣くかな、と思いましたが嬉しいほうが勝って今、興奮しています」。ニコリともせず言った。

プロ17年目の今も人前で、感情を出すのが照れくさい。
大事なことほど慎重に、言葉を選ぶから沈黙が長くなる。

「両親の実家が愛知なので。親戚も一杯いるし、伝統のある大会で優勝できてよかったです」は、精一杯の口上だ。

ガッツポーズも苦手。
それでも、全力の決めポーズは「周りの人にしろって言われますのでやりました」。
3度目の優勝は、難攻不落の和合でヒロシワールド全開だ。

2打差の7位タイから出た最終日は強風下で淡々と「63」を出した。
1番から連続バーディで追いつくと、再び5番の連続バーディで逆転した。
アイアンで、ビタビタチャンスにつけた。
この日7つのバーディは、ほとんど2メートル内から奪った。
「17番で3打差あると分かってめちゃくちゃ緊張した」。
でも、微塵も見せずにひょうひょうと、危なげなく逃げ切った。

昨年の最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」は「思い出したくもない」。上り2ホールの惜敗だった。
「ミスして負けた。悔しすぎて。引きずりました。何週間か寝られなかった」と、心を燃やし続けてシーズン再開を迎えた。

「自分も40歳になりましたけど、藤田(寛之)さんとか、ビジェイ・シンとか。40歳になって、たくさん勝ち星を重ねた人もいる。その人たちを励みに頑張ろうと思っています」と、目標を明かした。

先月には大学後輩の偉業もあった。
早朝のテレビ観戦で「ヒデキがバーディ獲っても、池に入れてもずっと太ももを叩いてました」。松山のメジャー初制覇の瞬間は「疲れました」と、入れ込みすぎた。

「ヒデキは日本ゴルフ史上最高の選手。その彼が勝てなかったら誰も通用しない。勝っていろんな道を切り拓いてくれた」と、厚く感謝。
「ヒデキが目澤くんに習い出して。ヒデキも習うんだ、と思って。目澤くんのYouTubeも凄い見ました。参考になったこと……ありました。言わないですけど」。

今年は震災10年。3月のあの日、あの時刻にいつものように故郷の海を見下ろすコースで黙とうを捧げた岩田は、「これからも、忘れちゃいけないことと、前に進まなくちゃいけないことがあると思う」と、ポツリと言った。
口下手だが秘めた思いは超熱い。
「たくさん勝ち星を重ねてみんなの笑顔が見たい。会場で、まだ観戦はして頂けないですけどテレビの前のみなさんに少しでも感動を与えられたら…と、思っています」。
一番大事なところは照れも隠しもしなかった。

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