ISPSハンダマッチプレー選手権(3回戦〜決勝) 2018

ちびユータに贈る言葉

小学時代に、地元千葉県のゴルフ練習場で出会った1歳違いの2人は同じ名前を区別するため当時、ついたあだ名が“でかユータ”と“ちびユータ”。
共に、遊びながらゴルフを覚えた。そんな幼なじみがでっかいやぐらの頂上近くで相まみえて改めて、“ちびユータ”は聞きたい。
「そんなゴルフを常にやってたら、精神的にハゲるんじゃないですか、と」。

ジュニア時代から、抜きんでていた。そんな池田勇太を「この人には生涯敵わない」とただただ仰ぎ見るばかりだった木下裕太。
あこがれの人と、準々決勝で戦うことになり「4日間のストロークだと、まず全然敵わない。でも一発勝負のマッチプレーならと、思ってやらなければと思った」。
全力でぶつかった。

序盤に早々の4アップも“でかユータ”が隙を見せたのは、中盤。勇太の8、9番の連続ボギーと、13番の裕太のバーディで、どうにか1アップまで戻してこられた。
「もしかしたら・・・」。
“ちびユータ”の一瞬の期待も、しかしそこまでだった。
「勇太さんは、本調子じゃなかったと思うが要所要所で凄いなというパット、ショット。アプローチも。全然隙がなかった」。
ツアー通算19勝で、2016年の賞金王だ。
王者のゴルフに対抗するには、まだまだ裕太の踏ん張りは、足りなかった。
スタートの1番や、16番では最後のワンチャンスも、みすみす逃した。
「自分はぽろぽろミスして。1ダウンまでは行けたが、勇太さんにはそういう勝負どころで決めて、取られて。勝ってる人、世界でやっている人は、やはり凄いと」。
改めて、仰ぎ見た“でかユータ”は2&1の勝利に喜ぶどころか厳しい顔で、反省に終始していた。

「8番、9番は自分のミスで、流れを切らしてしまった。相手に隙を、与えてしまった。マッチプレーはいかにミスを少なく、バーディを獲れるか。相手ありきの中で、そういうのが凄く大事になってくる。明日は、いかにそういうゴルフが出来るか」。
上がってすぐ息つく間もなく翌8日の今平との準決勝に向けて、怖い顔でグルグルと頭を巡らす“でかユータ”。
確かに、普通の精神力なら若ハゲの1個や2個、できてもおかしくなさそうだ。

前日6日の4回戦でリューに5&4で勝った時には思わず涙がこぼれそうになった裕太。
「苦しさを味わって、涙が出た。それはそれで、ひとつ乗り越えられた。シードが見えてきて、俺も嬉しかったよ」と勇太も後輩の大躍進を喜びながら、しかしただ喜ぶだけではなくその先の展望と成長を厳しく促した。
「でも、それで終わりじゃないから。シードはあくまでも通過点。次は、次のステップをどうするか。自分に何が足りて足りないか。解析できればもっと活躍する選手になれると思うし、彼がまた、ひと回り大きくなっていく姿を俺も見たい。もともとポテンシャルは、あるのだから」。
時を経て、いま同じ舞台に立つ者として、“でかユータ”から“ちびユータ”に贈る言葉だ。

「昨日はウルってきたけど僕もそれで満足したわけじゃない。今日は勝ちたかった。そうしたら、もっと自信が付けられたと思うが今日は、勇太さんも楽しかったと言ってくれたので。明日は、勝って終わりたい」。
いよいよ準決勝に挑む勇太を横目にしながら、裕太は勇太の言葉をしっかり受け止め、翌8日の5位タイ決定戦に挑む。

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