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日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills 2018

時松隆光がまだ土曜日の宍戸で噛みしめた幸せ

初日から、また67を3つ並べた土曜日の宍戸で時松は、「幸せを感じていた」。沸き立つ喜びの中で、最後は見事なパーセーブを見せた。右手前のバンカーに落とした18番の3打目。「思ったより壁が高かった」とピンチの中でも冷静だった。
「変に色気出すとまた戻ってくる。オーバーでもいい」。根元の見えないピンに向かってウェッジを振り切った。ドッとどよめく歓声で寄ったと知った。
お先のOKパーで、3打差の首位を守った。
そのまま、18番グリーンの“お立ち台”で公開インタビューに臨んで、あこがれの先輩方を差し置き、3日目の主役になった。

この日、同組で回ったベテランの近藤。「まだ10歳も行ってなかった。“バーディ”という言葉を覚えたのがやっとの頃」。
父に連れられ見に行った。地元福岡で行われる真夏の風物詩「RIZAP KBCオーガスタ」で優勝争いをしたのが近藤だった。バーディを一杯獲って、颯爽とカッコ良かった。「ああいう選手になれたらいいな」。
終わって、父親にせかされ駆け寄った。そのときもらったサイン入りのボールは今も大事にとってある。
「他の選手にも、頂いたはずなんですけど。確かにもらったと、覚えているのは近藤さんだけ」。
幼心に焼き付いたスター選手と今、メジャーの舞台で共に優勝争いを繰り広げている。
「今やロープの中で、一緒に戦えている。この職業で良かったと思った。凄い充実感があった」。

噛みしめながらスタートした。序盤の連続バーディで飛び出した。5番、17番も「まあまあ深いラフに行ったが先週で、免疫があった」。
先週はやはり茨城で行われたミズノオープンで、最長の8000ヤードを戦った経験を生かした。
ボギーは1.5メートルを外した9番ひとつで踏みとどまった。

勝てば5年シードのメジャー戦。特典のWGCブリヂストン招待の出場権は、昨年2勝目を飾ったブリヂストンオープンですでに得ている。
今季、国内開幕前から言っていた。
予選落ちがない同大会で「どべにならないように頑張ります」。同世代たちがじれったいのは、実力がありながら、そうやって自分を卑下してばっかりのゲンちゃんだ。
勝てば全英オープンの出場権もついてくる。先週大会で、すでに切符を得ている大親友の川村昌弘が言っているそうだ。
「ゲンちゃんと一緒に行きたい」。
「まぢっすか?! そんな・・・僕にはまだ早い。行っても結果が見えているから。日本でいろいろ勉強させてもらって、それから」。
そんな謙虚な24歳に、宍戸の女神は微笑むか。

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