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東建ホームメイトカップ 2017

竹安俊也は「言えませんっ!」

嬉しくて、笑っているのではない。ただ、笑うしかなかっただけ。この日の5番ティでの出来事だった。
同組の藤本がふと言った。
「俺、間違ってたな。ごめんな」。
前の4番ティでの話。3番で、藤本がボギーで竹安がパーで。だから、次のホールは本来なら竹安が、先に打つはずだが、なぜか抜かされた。

「…でも言えません!」。
なぜなら藤本は「神」だから。大阪名物、通天閣に住まう幸福の神様ビリケンさんに似ているからだけではない。
竹安には東北福祉大の3つ先輩。
「先輩がキャプテンで、僕が1年」。当時から、話しかけることすら出来なかった。
「当時から、凄くゴルフが上手くて尊敬していた」。
この日、3日目に同組で回ることになり、「震えるほど緊張していた」。出だしから連続ボギーを打った。
その直後の3番での出来事だった。

「言えよ!」と、前のホールで順番を抜かしたことに、自分で気づいた先輩から逆に叱られ、引きつった(?)笑顔で応えたのがこの写真。
状況を察してか、もう一人同組の矢野が冗談めかして「怖っ」と、突っ込んでくれたことで場が和んだ。
5番の連続バーディで、流れをつかんだ。
2015年の関西オープンで、2日目に9位につけたが3日目に崩れた。
「あの経験が生きたのかな。今日伸ばせたのはかなり、自信になりました」。

昨年は、アジアの二部ツアーで1勝。今季は、昨年12月のファイナルQTランク2位で得た日本ツアーとの掛け持ち参戦で、活躍の場を増やしている。
ひとつ上の松山英樹もまた、竹安にとっては「神」といい、「僕には足元にも及ばない神様がいっぱいいる。」。
強豪ひしめく名門校の自称・劣等生も明日を夢見て懸命に頑張っている。

いつも自分でコーディネイトしているというスタイリッシュなウェアは「顔が地味なんで。服くらい目立つものを」とどこまでも、自虐的な24歳が春からさっそく飛躍のチャンスを迎えた。

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