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カシオワールドオープン 2016

ボーダー線上の男。岩本高志が足の痛みに耐えて2位

本当はもうこれ以上、踏ん張れないほどに痛い。「でも、今年はこれが最後だから」。練習場で、谷口徹に「崖っぷちの男」と呼ばれた。その言葉も甘んじて受け入れ、自身の今季最終戦で懸命に踏ん張っている。

賞金ランク63位の岩本。現状では、第一シードのボーダー線上にいるベテランだ。
専修大で同期の黒田博樹さんが引退を表明した今年。41歳の初シード入りはもう目前。
ゴルフなら、まだまだやれると胸をはりたい大事な終盤戦で、両足のアキレス腱の炎症は起きた。
「HEIWA・PGM CHAMPIONSHIP」の3日目にはもう歩けそうにないほどに、足首が腫れ上がった。
「トレーナーに看てもらったら、休むしかない、と」。
この状況で休めるわけがなかった。現行の規程では上位61人から75人、現状のランキングなら63位から82位までの、いわゆる第二枠も、れっきとしたシード権だがそれだと来季の出場試合数にも響くしどうせならこのまま踏ん張りたい、と思うのは当然である。

「無理をした」。
その翌週の三井住友VISA太平洋マスターズも思いがけず直前に欠場者が出たことで、繰り上がり出場を果たしてさらに無理が重なった。

「グリーンでラインを読むのも相当痛い。歩くのも、よろしくない」と、とっくに限界は超えているが「今週、終われば休める。楽しんでやろう」。
いよいよ、今年も残り1試合となって“第一”とか“第二”とか、そんなこだわりももう捨てた。
「どちらでも、来年は出場できる。そんな状況は初めて。贅沢な悩みだ、と。幸せなことだと思ってやろう」と必死で持ちこたえている。

足のあまりの痛みのせいで、かばっていたせいか「先週まで右足に体重が乗れていなかった」。そのために、スイングのタイミングが速くなっていたことを、メーカーのスタッフに指摘され、今週はますます痛みをこらえて踏ん張っている。

初日は強い風が舞う中で、ボギーなしの3アンダーで上がってきたクラブハウスで「やるな!」と谷口。
いつも手厳しい先輩の鼻も、ひとまず明かした。
「明日も歩けるかどうかだけれど、なんとか持ってくれたら」。残り3日も踏ん張り続ける。

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