Tournament article

マイナビABCチャンピオンシップゴルフトーナメント 2012

山下和宏は「どこか一発当てろよ!」と自分にカツ

いつも爽やかな笑顔。柔らかな物腰、礼儀正しさ。謙虚な姿勢で、ファンの心をつかんできた38歳が、戦いの牙を剥きだした。2008年に初シード入りを果たした頃には、よく言っていたものだ。
「飛び抜けて良い成績ではなくても確実に予選を通り、常に20位前後にいることが、シード権を取る秘訣だ」と。

確かに、それなら毎年、そこそこ安定した結果は残せるだろう。
しかしあれから4年でシードの常連となり、幾度も優勝争いに加わりながらも初優勝にはまだ手が届かず、今年は先週まで3週連続で「13位」。

中途半端な数字が面白いように揃えば、そろそろ自分にこうも言いたくなって当然だ。
「そんなことより、どこか一発大きく当てろよ!」。

3週連続の13位よりも、たとえば一度の単独3位のほうが賞金も稼げるのに。「守っているのか、攻めているのか」。自分でも、よく分からない自分。

「もうそろそろ、ガツガツ行ってもいい頃」。
いつも穏やかな選手がここに来て大きな方向転換は、「技術的な不安がクリアされたことも大きい」。
先週のブリヂストンオープンでも最終日を3打差で出ながら「朝一で左に引っかけた」と、ここぞというところでミス。
4日間のフェアウェイキープ率は1位を記録しながら「最終日は3つしかバーディが取れない。自分で自分が嫌になった」という。

もっとさかのぼれば昨年の今大会。2日目まで2位につけながら、最後に崩れて22位まで落ちた。
忸怩たる思いを抱えてやってきた今週は、それを一瞬で払拭する発見があった。
「真っ直ぐに上げて下ろすことに意識を置きすぎていた今までのスイング。ループするように変えたら、凄い良かった」。パットにも応用したら「これまた見事にハマった」。グリーン上で引っかけるクセも治まり、「雲が晴れて視界良好」。
途端に初日から、いきなりボギーなしの65で飛び出した。

ふいに強気の心変わりは、仲間の活躍もある。
練習仲間で後輩の上平栄道(うえひらまさみち)。「いつもは僕がアドバイスをする側が、今は大きなことも言えなくなっちゃうほどの大活躍」。初Vこそ上平もまだだが、今季は破竹の勢いで再三のV争い。現在賞金ランク8位は、山下も虎視眈々と狙うツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の出場権も早々に決めて、「僕もと、奮起するものはある」。

また、いま賞金レースの渦中にいる谷口徹。「ご近所さんで、合宿にもよく誘ってもらう。見ていろいろ吸収したい大先輩」。一番、見習いたいのは、やっぱり気持ちの強さだ。「立ち直りの早さ。どんなピンチにもへこたれないところ。最後まで諦めない姿勢」。
大いに尊敬はしている。「ご飯もよくごちそうしてもらう」。
公私ともに世話になり、感謝こそすれ、「師匠ではない」とそこは一線を引きたい意図は「「谷口さんに勝たないことには、一番にもなれないでしょう」。

ただ、仰ぎ見ているだけでは超えられない。「僕も谷口さんに勝ってなんとかそこにたどり着きたい」。頂点だけを見据えて貪欲に攻めていく。

関連記事