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キヤノンオープン 2011

小山内護は「がつんと行くよ!」

喜んだり、びっくりして目を剥いたり、赤面したり。大忙しの66だ。インスタートの11番で、左のバンカーに入れてボギーが先行したが、「12番ですぐに取り返せた」と嬉々として、13番で連続バーディを奪うと15番から3連続。

しかし、「恥ずかしかった」と、普段は剛胆な選手が屈強な体を小さく縮めたのは3つめの17番だ。ツアーきっての飛ばし屋は、417ヤードのパー4で第2打の残り距離がたった60ヤードに「よう飛んでる」と胸を張ったまでは良かったが、その次がいただけなかった。

そこからのアプローチは「チャクっとした」と、グリーンの端っこに乗っかっただけ。正味40ヤードも飛んでいない。それだけでも気まずいのに、23ヤードもあったというバーディトライが、なんとカップに吸い込まれていった。

「恥ずかしかった」と繰り返した。「だって、あんなの入ると思わないじゃん!」と、奇跡のパットにはびっくりまなこで、嬉し恥ずかしのフロントナインを折り返すと、後半はさらに2つスコアを縮めて単独2位に居座った。

昨年は、7月の「長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップ」で4年ぶりの復活優勝。2年間のシード権は、猶予を与えられたことで気を大きくして、スイング改造に踏み切ったのはこのオフ。

きっかけは、この日も同組でまわった河井博大(ひろお)だ。小山内の紹介で今年、河井がジャンボ邸の冬期合宿に参加したときのこと。なんでも河井はデジカメで、いろんな人のスイングを撮影するのが趣味らしく、このときも小山内の写真をパチリ。

液晶画面でチェックして、愕然とした。
「俺のスイングって、こんなにひどいの?!」。
河井が、「いやいや、これが小山内さんの良さ」と説得されても納得出来ない。
一昨年前には左肘を痛めたことが原因でシード落ちを喫しただけに、「このスイングをしていたら、当たり前」と、痛感した。
「脇があきすぎてるせいじゃない?!」などと、不満を訴え続ける小山内に、河井もとうとう折れて「じゃあ、思い切ってやってみましょう」となった。

「トップの位置からアドレスから。すべてが以前と違う」という大改造に、最初はろくにボールにすら当たらなかった。序盤は7試合連続の予選落ちにも、やるからには肝っ玉も座っていた。
「今に見てろ」と、ど根性。「スイングが出来上がったら、待ってろよ」と心中で、誰にともなく宣戦布告。虎視眈々と、地道な取り組みがいまようやく実った。

試行錯誤の末に、ヒジも痛まず、飛んで曲がらないスイングが完成した途端に上り調子で今週も、優勝争いに加わった。数年前にはイップスに苦しんだ課題のパットも、一月ほど前にテレビで「女子だったか、男子だったか」。ある選手のストロークを見てひらめいた。
「俺はいつも、パターは真っ直ぐ後ろに引くものだと思っていた」。勘違いだと分かって以来「振り子」のイメージで打つようにしたら、格段にカップインの確率が高まった。

また、ヒジを痛めたことで「怪我の功名」。クラブさえ上げられず、フルスイング出来ない時期に、みっちり練習したショートゲームにも自信がついて、ほとんど死角は見あたらない。
「こうなったら、遼とやってみたい」と願っていたとおりになった。3日目は石川遼と、最終組での直接対決。「俺の子供といってもおかしくない。21歳も下の遼から若いエキスを吸い取る」と、強欲だ。「行くよ。ちょっとガツンとね。遼に力を入れさせるくらい。頑張るよ」。今週ばかりは41歳が嬉々として、20歳に宣戦布告だ。

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