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〜全英への道〜 ミズノオープンよみうりクラシック 2010

このツアー初Vで、薗田峻輔は初のメジャー切符を獲得

さかのぼること今から2年前。明治大学への進学に、迷いはなかった。「大学に通いながら、プロの試合で経験を積み、アマチュアの試合でそれを生かす」。

そんな青写真は実際に1年間を過ごしてみて、絵空事だったと思い知らされた。さまざまな行事に紛れ、「いくつかあった、ツアーの推薦出場も、すべて断らざるを得なかった」。
その間に後輩の石川は、「すくすくと伸びていった」。そしてついに、史上最年少の賞金王まで上り詰めたことで、心は決まった。そのライバルとして名を上げた池田勇太の活躍にも触発された。

3歳のころに、初めておもちゃのクラブを持たせてくれた父・俊信さんにも内緒で取り寄せていた、ツアーの出場優先順位を決める「クォリファイングトーナメント(QT)」のエントリー用紙。
しばらく逡巡を続いたが、「厳しいけれど、必ず自分にも得るものがある」。いよいよ決意を固めて大学に相談したら、思いがけず激励を受けた。
「両立する方向で、サポートしていくと言っていただいて。その言葉にも、応えようと思ったんです」。高校時代から目指してきたのは文武両道の道。「そっちの方も、挑戦してみたいと思った」と薗田は言う。

“大学生プロ”のツアー初優勝は、99年の日本ゴルフツアー機構(JGTO)発足後、2008年の今大会のドンファン(当時、高麗大2年)以来、史上2人目の快挙に大学2年目のプロ転向は「やっぱり良い決断だった」と、確信出来た。
厳しい世界で揉まれることで、アマチュア時代には得られなかった貴重な体験と、充実感が確かにそこにはあった。

昨年のQTは、会場のシビアな雰囲気に、もう懲り懲りだと思っていた。この予選2日間は、豪州のカート・バーンズとラウンドした。昨年のQTランク1位の選手は、すでに800万円ほどを稼いでおり、羨ましく思ったものだ。まもなく出場優先順位は1回目のリランキングが行われるが、「まずはバーンズに負けないように」と、2日前まではそのことだけを目標にしていたのに。

それがこの先2年間のシード権も、ルーキーイヤーでの初Vも、この1週間でいっぺんに手にしてしまった。「本当に、来週からずっと出られるんですか?」と、すぐにはその事実が信じられない。

しかも全英オープンの日本予選を兼ねた今大会は、上位4人に与えられるメジャー切符も手に入れた。今年の舞台はセントアンドリュース。すでに、世界ランク50位内の資格で出場権を持つ石川とともに、聖地に立つ。
中学2年からの2年間、豪州でのゴルフ留学で風のゴルフは少しは慣れているつもりだが、リンクスコースはきっとそれ以上だろう。
「地面も凄く固くて、風も凄くて大変なんだろうなあ・・・!! 1番は何で打つか。17番はホテルに当ててみるか、とか。想像が、膨らんでます」。
弱冠二十歳の心は、すでにイギリスに飛んでいる。

写真=深夜2時に都内の自宅を車で出発し、早朝7時にコースに着いたという父・俊信さんと。お互いめったに連絡を取り合わないそうで、今回も内緒で応援に駆け付けた。「いまはもうほとんど私から子供に口出しはしません。大人の階段を確実に上ってますね。これでようやく、プロとしてのスタートが切れました」と、息子の雄姿に目を細めていた。

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