Tournament article

小山内護が4年ぶりの復活優勝

20歳の薗田と21歳の趙を破った小山内もまた、近ごろ健在の40歳。若々しいガッツポーズでアピールした
“宴会部長”のツアー通算4勝目は、おめでとうの言葉より、こんな祝福がふさわしい。「お帰りなさい!」。大勢の呑み仲間から、口々にそう言って迎え入れられ、破顔一笑。177センチ、85キロの体が軽々と担がれた。中でもひときわ喜んで、肩車で祝ってくれたディネッシュ・チャンド。今季はレギュラーツアーへの登竜門「チャレンジトーナメント」で互いに復活を誓い合った戦友だ。その頭上で思わず声も裏返る。

「信じられる? 俺、これが今季初戦なんだよ!」。

本戦切符をかけた予選会「マンデートーナメント」を突破して、頂点まで勝ち上がった選手は過去4人。しかし、その“初戦V”は史上初。
「去年、僕はシードを落としまして」と表彰式で、満員の観衆にも事情を説明しようとして、ふいに喉を詰まらせた。
「まさか今週、優勝できるなんて思ってなくて」と、そこまで言って男泣き……。

左ヒジを壊したのは昨年5月。ベルトのバックルも外せない。ツアーきっての酒豪が「ビールジョッキも持てなくなった」。それでも、転戦中の怪我を公傷とみなす特別保障制度の申請は、頑としてしなかった。「怪我は本人の責任。ズルイ気がして」。

男の美学と言ってしまえばカッコは良いが、痛みを押して出場を続けて案の定、98年から初のシード落ち。しかも出場優先順位をかけたファイナルクォリファイングトーナメント(QT)にも失敗した。
それでもツアー通算3勝の実力者なら、推薦出場を受けようと思えば出来ないことはない。しかし「甘えが出る気がして。やるからには実力で出たい」と、これまたあえて自ら安易な出番を絶って「引きこもった」。
キャディバッグは埃をかぶった。トーナメントのスコア速報も見る気がしない。趣味のパチンコで時間をつぶそうにも道楽する「金もない」。転戦中は、夜な夜な率先して後輩を呑みに連れ出したものだが、試合に出られなければそれも出来ない。「つまらない」。
かわりに韓国ドラマのDVD鑑賞にハマった。せめて“韓流気分”を盛り上げようと、マッコリをひとり、チビチビと呑みながら思った。

「試合に出たい」。

シード選手だったころは「当たり前のように出ていた」。ミスショットには、すぐにふて腐れて「また来週あるさ」。しかしいざ、恵まれた稼ぎ場を失って気づかされたのは「試合に出させてもらえることの有り難み」だった。

だからこの週は、「この場所にいられることの幸せを感じながらプレーした」という。感謝の思いは、ちゃんとスコアに出ていた。4日間で、ボギーは第3ラウンドで叩いた2つだけ。72ホール目に渾身のパーセーブで20歳の薗田峻輔と、21歳の趙珉珪(チョ・ミンギュ)相手に臨んだプレーオフ。
特に趙は思いのほかしぶとくて、ツアー2勝目は99年の日本プロマッチプレーで「タイマンなら負けない」と決勝戦で、あの谷口徹をたたきのめした男は久々の一騎打ちに、燃えに燃えた。

クラブを握らず、ひそかに転職も頭をよぎった日々も、毎日欠かさず続けたのは「Tシャツが、汗で搾れるほど」のジョギングと、弱点のパット練習。
自宅のパターマットで自分の歳の数だけ連続で打つ。40回目前で失敗したら、また一からやりなおし。「毎回、かなり集中してやった。その成果は確かに出た」。

日本カルミック提供のドライビングディスタンス賞50万円は、額賀辰徳に譲って「まだまだ」と本人は嘆いたが、2004年から3年連続のドライビング王は健在だった。

18番パー5で繰り広げたプレーオフは2ホール目に330ヤードドライブ。3ホール目は、イーグルパットが3メートルもオーバーしたが、きっちりと入れ返した。2ホール目から果敢に2オンを狙い続けて、4ホール目に趙をねじ伏せた。長嶋茂雄・大会名誉会長に「パワーあるね!」と言わしめた。ご近所のよしみで何かと世話になっている、里見治・セガサミーグループ代表取締役会長兼社長にも「やっとご恩返しが出来た」と喜んだ。

40歳の復活劇に、再び夢が膨らんだ。
「今年は2勝、3勝と挙げたい」。
「米ツアーにも行きたい」。
「打倒・石川遼! 飛距離では負けない」とポンポンと、貫禄のヒゲをたくわえた口から出るわ出るわ。
だがその前に……。
今週は、久々の“ツアー初戦”に「金がない」と、もっぱら平塚哲二や久保谷健一らにおごらせっぱなしだった。いきなり優勝賞金2600万円を手にしたからには、「さすがに、今夜はご馳走してやらないと!」。“宴会部長”が完全復活した。

  • 復活優勝を一番に祝ってくれたのが、今季主戦場のチャレンジトーナメントで復活を誓い合ったディネッシュ・チャンド。肩車されて感激のガッツポーズ。
  • ツアーの宴会部長は大勢の仲間に祝福されて…
  • “ミスター”にも「パワーある!」と言わしめた。白熱のプレーオフ4ホールを制しての復活Vだ。
  • この週は初日から悪天候のために2日連続のサスペンデッドにボランティアのみなさんのご苦労をねぎらって…。

関連記事