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藤田寛之がツアー通算9勝目

18番ホールでのプレーオフ3ホールで決着をつけて思わず歓喜のジャンプ、キャディの梅原敦さんとハイタッチに「めちゃめちゃ嬉しかったんです!」
こんな優勝スピーチは、近ごろちょっとお目にかかったことがない。お立ち台のチャンピオンが、満員の観衆に向かって質疑応答。満面の笑みで問いかけた。
「みなさん、今日の男子のプレーを見て、どうでした?!」。
と、たちまち賛辞の言葉が飛び交った。
「面白かったよ!」。
「凄かった!」。
「元気をもらった!」。
その声に、勝利の喜びも倍増だ。

一人のプロとして、目標にしていることがある。
「見てくれる人が、感動を持ち帰ってくれるようなプレーをする」。
それは、たとえば飛距離だったり、球筋や、スピン量だったり。アマチュアには絶対に真似の出来ないパワーと、卓越した技術。それに加えて、勝ち負け以上の興奮を、お客さまにも感じて帰ってもらうこと。

一昨年末には所属コースの葛城ゴルフ倶楽部(静岡)に専用のトレーニングルームを作ってもらい、40歳を越えてなおいっそう体を鍛え、スイングも試行錯誤で日々新しく進化させ、今季はリスクを覚悟で「足りないものを道具で補う」と、長尺ドライバーの起用に踏み切ったのも、すべてはそのためにほかならない。

今年になって、また一段と腕と胸回りが大きくなった。おかげで昨年までのウェアでは部分的に窮屈で、しかし1サイズ上げると全体に大きすぎるから、スタート前に自分で服の袖をギュウギュウと引っ張って、生地を伸ばしてから着ている。

そんな努力の甲斐あった、と心から思えるツアー通算9勝目。この日最終日の戦いは、見に来てくれた方々に、大いに満足してもらえたはず。そんな確かな手応えが、普段は控えめなチャンピオンにさえ、こう言わしめた。
「迫力も、技も。今日、ここにいるのはプロの中のプロ。遼くんだけじゃないんです!」。

ジャパンゴルフツアーは開幕から2試合連続のプレーオフ。第2戦のつるやオープンは、40代のベテラン2人が存在感をアピールした。
最終日は、42歳の谷口徹と、40歳の藤田寛之の一騎打ち。
プレーオフは、3ホール目にカラーから8メートルのバーディパットでねじ伏せてなお、「今日の谷口さんは恐ろしかった」と打ち明けた。

同じ最終組でまわる谷口は、この日怒濤の63をマーク。「打てば入る。完璧なゴルフでした」と振り返る。あっという間に追いつかれた。最初にあった4打のリードも14番ですっかり消えて、このあたりからすでに「谷口さんとのプレーオフは、始まっているも同然でした」。

両者一歩も譲らぬ攻防戦は、17番で藤田が5メートルのバーディチャンス。「下りの超スライス」をからがら沈め、再び1打リードで最終ホールを迎えたが、18番であっさりと入れ返された。

「あんな場面で思い切り打ってくるなんて。この人どういう神経してるんだ」。
内心で、毒づきながらも胸は躍った。
これまでの過去8勝を振り返っても、この日のデッドヒートは「気持ち的にもかなりきつい優勝争い」。
しかし、それほどのプレッシャーの中で、戦うことこそプロの醍醐味。
大ギャラリーの声援と歓声に包まれて、「振り返れば楽しい1日。幸せでした」と、頬に充実感を滲ませてなお、やっぱり「究極のマイナス思考」は治らない。

これほどのV争いを演じて頂点に立ったそばからこの人は、明日の心配をしている。
「・・・・・・来週から、予選落ちが続いたらどうしよう?!」。
どんなに勝ち星を重ねても、頭から将来の不安が消えることはない。
「だからこそ、コツコツやれるんです。怖いから努力する。今、出来ることにベストを尽くすしかないと思える」。
92年のデビュー当時から、その思いは変わらない。
そしてもちろん、これからも。

今年はさらに2勝、3勝と勝ち星を重ね、昨年5位の賞金ランキングを上回ること。
また国内外のメジャーで結果を残すこと。その2つを改めて目標に掲げ、明日からまたコツコツと努力を続けていく。
「谷口さんのような年上の強い選手にも、遼くんにも負けないように。40歳を越えても、まだ頑張っているヤツがいるということで、みなさんにも勇気を持ってもらえるよう。これからも、夢を追いかけ精進していきます」。
どのホールでも暖かい声援で勇気をくれた大ギャラリーに、感謝をこめて約束した。
  • 「谷口さんはオバケ。あんなプレーを同じ組で見せられたのは、ジャンボさん以来かも?!」と藤田
  • 西村文延・つるや(株)代表取締役社長より受けた新緑のチャンピオンブレザー
  • 地元・川西市長賞の兜は昨年末に生まれた次男の和己(かずき)くんに・・・!!
  • 大会に協力くださったボランティアのみなさんにも拍手の祝福で迎えられて・・・

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