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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2010

石川遼は「良い思い出として残るような最終戦に」

賞金レースを争う3人の中で、もっとも感情豊かで、表現豊かな19歳。思ったことを、素直に口にする。報道陣の質問ひとつにも、一言で終わらせることは、絶対にしない。何分もかけて、丁寧に饒舌に、自分の思いを語る。

そこに居合わせた人たちを、喜ばせたい気持ちでいっぱいなのだ。
もちろんコースでも、それは同じだ。

だからこそ、ラウンド中のアクションも大きくなる。ナイスプレーには派手なガッツポーズ、満面の笑み。「プロゴルファーって、単純ですから。僕は、なおさらかもしれない」と言って、照れ笑い。
反対に、ミスには鬼の形相でくやしがる。
近ごろますます、それが顕著で、あのウッズをも彷彿とさせる。

「それだけ、ゴルフに愛情を注いできた結果だと思います」と、石川は言った。
これまで金との直接対決は、1勝8敗と完敗。
「本当に隙のないゴルフ。羨ましいと思ってしまう」。
ライバル心も隠さずに正面からぶつかって、逆に打ちのめされてきた。

「キョンテがいま1位にいるのは偶然の結果ではありません。まるで機械がゴルフをしているような正確さ。しかし機械では絶対に打てない、柔らかなアプローチとパッティングのうまさ。彼にはミスがない。ウィークポイントというものがない」。

相手をたたえる気持ちは、池田に対しても同じで、「我以外ほか我が師」の精神こそが、19歳をここまで押し上げてきたひとつの要因でもある。

その石川が、その2人に勝るところがひとつあるとすれば、との質問を受けたとき、返答にそれほど時間はおかなかった。躊躇なく答えた。
「1打打ち終わったあとに、学んだり反省したりするのが僕は好き。今までも、そういう姿勢でやってきた。1打に込める思いは僕が一番。同じミスは絶対に繰り返さない、という気持ち。それに対しては、自信があります」。

ゴルフへの真摯な気持ちが、これまでにも数々の奇跡を巻き起こしてきた。
たとえば今年の4月の中日クラウンズでの最終日の58。
大事な場面での数々のチップインイーグル。
そのすべての発端は、2007年の史上最年少V。
あれから3年。
“大人の遼”は毎年、ここ東京よみうりカントリークラブは「ティショットでドライバー以外のクラブを握ったのは、前半の7番だけ」だった。
しかし今年は3番と、16番は「いつもドライバーで右のOBを怖がって左の林へ。怪我をした経験がある」。それを生かして、「その2ホールはドライバー以外のクラブで攻める」と、マネジメントも綿密だ。

「賞金王になってもなれなくても、良い思い出として残るような最終戦にしたい」とはいいながら、イソガバ.マワルナの精神は、この最終戦でも相変わらず。「カップを狙っていく姿勢は貫いていきたい」。目標にむかってまっしぐら。ここまで来たら、なおさら寄り道なしで2年連続賞金王にたどり着く。

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