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<シリーズ>ツアーを支える人々ボランティア有志のみなさんが、チャリティコンペを開催

いまやゴルフトーナメントに欠かせないのが、競技ボランティアの存在だ。ツアーは、そんな皆さんの善意の力によって支えられている。
日ごろの厚意に対し、選手や関係者が感謝の気持ちを“形”にして返せる場はなかなか持てないが、その数少ないチャンスのひとつが、3月13日(月)に行われた『チャリティフレンドリーゴルフ大会』だった。

今年も、兵庫県の小野グランドカントリー倶楽部で開催された同大会はこれが3回目。
ボランティア歴15年の“大ベテラン”柴田淳子さん(兵庫県三木市)は言う。

「最初のきっかけは、トーナメント会場に来ていても、『プロと一度も話したことがない』という人たちが多くいたことでした。触れ合いの場を増やし、プロの皆さんともっと打ち解けることができれば、仕事ももっと楽しくなるし、ボランティアの輪も広がるのでは、と・・・」。

そう考えた柴田さんが、史上初となるプロとボランティアの合同コンペを開催することに決めたのは3年前。
「楽しみながら社会貢献」をスローガンに、『ボランティア有志の会』を発足し、広くプロに呼びかけて第1回大会にこぎつけたのは、2004年の1月だった。

大会当日までの段取りは、煩雑を極める。
その苦労の多さに、発起人の柴田さんでさえ初めは1回限りになるだろうと思われたこのコンペ。
それがいまではオフの恒例行事になりつつあるのは、それだけ大会の趣旨に賛同する者が多いという証だろう。

交通費、宿泊費など諸経費はすべて自己負担。それにもかかわらず、開催コースの地元・関西の選手に混じって、毎年たくさんのプロが全国各地から駆けつける。

朝4時に広島の自宅を出てきたという河村雅之は、これが大会初出場だった。
「発足当時から、ずっと出たいと思っていたコンペ。今日は、いつもお世話になっているボランティアの皆さんに会えるのを楽しみに来ました」。

千葉県に住む髙橋竜彦は、このコンペに参加するため契約メーカーに頼み込み、大阪でのイベントを1週ずらしてもらった。
「他のどんなプロアマトーナメントよりも、大事な大会に思えたので」。
表彰パーティでは最後まで会場に居残って、景品のプレゼンター役をかって出るなど積極的に輪の中に入っていった。

はるばる横浜からやってきた川岸良兼は、すでに昨年のうちからこのコンペへの参加を決めていた。
あいにく小雪の舞う荒天の中、笑顔で言った。
「・・・遠くからわざわざ大変? 全然そんなことないよ。だって、こんなことでしか恩返しできないからね」。
実はコンペの実行委員長で、柴田さんの夫・英雄さんが大会直前に病いに倒れて参加できなかった。
柴田夫妻を“お父さん”“お母さん”と呼んで慕う川岸は帰り際、やにわに着ていたピンクのセーターを脱ぎ去った。
「お父さんへのお見舞いに・・・」。
受け取ったセーターを、妻・淳子さんは大事そうに胸に抱え込んだ。

今回、参加したボランティアは90人、プロ30人。総勢120人のスタートは、フルショットガンとなる大掛かりなものとなった。
それでも、この日参加できなかったプロや各ゴルフメーカーから「せめてものお礼に」と届けられた賞品は、参加ボランティア全員に行き渡ってもまだ、余裕があるほどだった。
「それも感謝のあらわし方のひとつだと思いますが、次回はぜひ大会にも参加するなど選手のみなさんにはこれで満足せずに、常に“ありがとう”の気持ちを伝えていく姿勢を大切にしてもらいたい」。今回、このゴルフ大会を後援した日本ゴルフツアー機構・会長の島田幸作はそう訴えた。

写真上=“チャリティフレンドリーゴルフ大会”実行委員会の面々と、日本ゴルフツアー機構会長の島田幸作(上段左から4番目)。下段の左端が発起人の柴田淳子さん。今回、夫で実行委員長の英雄さんが病いに倒れて参加できなかったが、「実行委員会の結束力は絶大。お父さんがいなくても、平気です!」。大会前日も、このメンバーで夜遅くまで準備に追われた。

写真中=千葉から駆けつけた髙橋竜彦のチームは終始、笑いが飛び交い和気藹々ムード

写真下=横浜から参加した川岸良兼率いるチームは4位と健闘

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