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日本プロゴルフ選手権大会 2005

新留徹(にいどめとおる、玉名CC所属)「明日の最終日は、5アンダー出すつもりでやります」

前の晩は親戚一同で、ささやかな祝宴を持った。プロ入り初試合で、初の予選通過を祝うためだ。
イーブンパーで迎えた前日2日目の18番ホールは、まるで優勝シーンのような盛り上がりだった。決勝進出を確信した関係者らが、口々に叫ぶ。
「とおるっ!おめでとう〜っ!!」。
帽子を取って、イガグリ頭で、声のするほうへなんべんも挨拶。満面の笑顔を振りまいた。

今大会開催コースの、玉名カントリークラブ所属。昨年のPGAプロテストに合格したばかりで、ツアーの出場権はなく、主催者推薦でこの大一番でのプロデビュー戦を果たした。

熟知したコースでのプレーだからこそ、プレッシャーもかかる。トーナメント仕様の早いグリーンに、本人はすっかり度肝を抜いている。それなのに周囲は、「ホームコースなんだから、予選通って当然」という目で見ているのを、ひしひしと感じる。

加えて、ホールをぐるりと取り囲む大ギャラリー。
初日の1番ティは、「クラブにボールが当たらないんじゃないか、と思うほど緊張した」という。

そんな重圧をはねのけてのぞんだ、決勝ラウンド。
弟の誠さんと、そんな緊張はみじんも見せない堂々とした歩きっぷりで、慣れ親しんだコースをプレーした。
最後の18番は、残り17ヤードの第4打をサンドウェッジでチップインバーディ。
きちっと見せ場も作って盛り上げた。

初日のことだ。練習場に入ろうとすると、警備員から「お客さん、入ったら困ります」と止められた。ギャラリーと、間違えられた。
「我ながら、プロらしくないんですよね」と、本人は頭をかいたが、まだ学生といっても通用しそうな風貌は、21歳に見えない童顔と、短く刈り込んだ髪のせいだろう。

しかし、この髪型はまだまだ、変えられない。師匠との、大事な約束でもあるからだ。
阪東忠義と吉村金八の両プロに弟子入りしたとき、2人から言われたのだ。
「徹、お前は初優勝を上げるまで、髪は伸ばすなよ」。
今週の戦いは、いつか迎えるその日までの通過点。
「明日の最終日は、5アンダーを出すつもりでやります」。
地元ファンの声援にも後押しされて、新留がいよいよラスト1日にのぞむ。

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