記事

日本プロゴルフ選手権大会 2025

近藤智弘「コネでも出られるけどコネではない」19年前の初V舞台にまた立てる喜び

2006年に、ここ三甲ゴルフ倶楽部谷汲コースで行われた本大会が、自身のツアー初Vだった。
しかも、4年前から本会場の所属プロ。
歴代覇者の近藤智弘(こんどう・ともひろ)が、思い出と思い入れがぎゅっと詰まったコースで、いつになく生き生きしている。

優勝時は28歳だった。



当時、52歳の友利勝良(ともり・かつよし)と争ったプレーオフは忘れもしない。
1ホール目にグリーン奥から第3打をピタリと寄せた。

「もちろん、いい思い出。初優勝ですからね」。

19年前の歓喜と感動が今もくっきりと残る舞台に、47歳で再び戻ってこられた。
「しかもコネではなくね。コネでも出られるけど、コネではない」
つまり、コースの所属プロだが“推薦出場”ではない。

40歳の2017年に、最初の賞金シード落ちを喫して以降は、度重なるケガで出入りを繰り返すが、今季は生涯獲得賞金25位内の1年シードで参戦する。
「自力で出れているところはひとつ嬉しいところ」と、胸を張る。

当たり前のことだがこの19年で、レギュラーツアーの顔触れはがらりと変わった。
大学時から、共に3強とうたわれた星野英正(ほしの・ひでまさ)や矢野東(やの・あずま)ら同世代のライバルたちが次々と減っていき、今は見渡すばかり20代。

「みんな挨拶はしてくれるけど、あまりにも差が開きすぎて顔と名前が一致せず、ジュニアの試合に来ているみたい。プレー終わってわーっと、会話ができない。職場に同世代がいなくてつまんない」。
ベテランだから、堂々としていればいいとは思うが、最近は逆に若手に気を遣い、練習場の打席もいつも端っこ。

「アウェイな感じ。ホームで戦っている気がしない」と、居心地の悪さは年々増す。
「もちろん、出るからには一生懸命やってるし、集中してやっているけど、手ごたえと成績が合わない。カットラインが想定と3打は違う。悪くなくても予選落ち。いいプレーでも2、30位。ベスト10に入れる感じがしない。ステージが違う感じがする」と、泣き言ばかりがこぼれてしまう。

「この3、4年でとてつもなく変わっている」と、痛感するレギュラーツアー。

ただ今週は、主にシニアツアーを主管する公益社団法人日本プロゴルフ協会(PGA)が主催する今年最初のタイトル戦。
出場カテゴリーも、一般社団法人日本ゴルフツアー機構(JGTO)が主管する普段のレギュラーツアーとはがらりと異なり、昨年のシニアツアー賞金王や、シニアメジャーの覇者も多く集う。

来月17日の誕生日で48歳になる近藤には、むしろこちらのほうが馴染みのメンツ。
開幕前日のプロアマ戦ではデビュー以前から懇意にするレギュラー8勝の先輩、深堀圭一郎(ふかぼり・けいいちろう)と同組になった。

深堀がレギュラーツアーに出ていたときは、毎週のように練習ラウンドした。
「今回は久しぶりに圭さんと回れて、本当に嬉しかった」と、満喫した。



「練習場に行けば自分が若い時のレギュラーツアーのメンバーがいて、めっちゃ楽しいな」と、会場で顔を突き合わせば他愛ないお喋りに華を咲かせて、いつになく心もほぐれる。
「今週は“年寄り”が多くて楽しいです。3年後には僕もいける」と、シニア入り後の自分のプロ人生も想像できて、ウキウキしてくる。

静岡と三重、愛知、兵庫の4つの姉妹コースを抱える三甲ゴルフ倶楽部の中でも、近藤が普段、もっともよくラウンドするのは、地元愛知の「京和コース」で、今回の「谷汲コース」は年に1、2回ほど。
それでも周囲には「得意でしょ?」と言われる。
確かに、V経験はあるが19年前から総距離は300ヤードも伸びたし、グリーンの速さも硬さも格段に増していると感じる。

「そんなわけないじゃん…」と、内心は苦笑いでつぶやきながら、笑顔で「頑張ります」と、答える。
「プレッシャーはありますけど、刺激はある。初優勝したコースで所属プロとして出られるのは感慨深いし、くじけられない、というモチベーションはあります」。

ここ数年この時期は、毎年ケガの治療で精いっぱいだったが今年は痛いところも見当たらず、トレーニングも練習もしっかり積んで乗り込んできた。
「結果はともかくとして、一生懸命頑張ります」と、本戦前に気合を入れた。

関連記事