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丸山茂樹がホールインワンを達成して単独首位キープソニー・オープン・イン・ハワイ3日目

撮影:Canon「EOS 20D」
「かなり、ピンに寄ったかな」という感触を抱きつつ、ティを拾った。その瞬間は、見ていなかった。誰かの「入った!」という大声で、ハっと顔を起こした。
203ヤードの4番パー3。6アイアンで打ったティショットはピン手前で軽くバウンドして、すでにカップに吸い込まれたあとだった。

「不思議と、プライベートでは1回もやったことがない」というホールインワンは、日米両ツアーを合わせて自身、試合で6回目の快挙達成。
呆然と、キャディと顔を見合わせた。戸惑いを隠せないままとりあえず“バンザイ”したが、自分でも、ふいを突かれて「オーバーリアクションができなかったのが残念!」。
拾い上げたボールにキス。この日の丸山にはまさに、起死回生のイーグル奪取だ。

首位でスタートした1番パー4は、両サイドにOBゾーンが横たわる難しいホール。
「しっかりターンして振り抜いていかないと、という気持ちが強すぎた」。
ティショットは、大きく右へ。
続く第2打も「多少、隙間があったので狙っていこうと思ったのが裏目に出た」。ピンまで140ヤード地点にようやく出しただけ。
第3打もグリーン右に外し、4オン2パットのダブルボギーだ。

いきなり出だしの洗礼に「別にプレッシャーがかかって、というものではなかった。普通のダブルボギーだったので、そっちの方がショックだった」と、振り返る。

さっそく首位の座を明け渡してしまったが、“世界のマルヤマ”はそんなことでへこたれはしない。
そのとき頭の中にあったのは、「とにかくイーブンパーに戻そう」ということ。リーダーズボードを意識するよりも、「とにかく、気持ちを落ち込ませないように。2つくらいはすぐに取り戻せる、と思うようにした」という。

ワイアラエの上空には相変わらず、強い海風が吹き荒れていた。
「この風の中ではトップを意識するよりも、自分のプランをやり直さないと、という気持ちで一杯」。
それだけに、4番は大きかった。
「あのホールインワンに助けられた。あれがなかったら、今日はどうなっていたか分からない」。
最終18番パー5もイーグルチャンスこそ外したが、楽々バーディで通算10アンダー。首位を守ってホールアウトだ。

昨シーズンは全米オープンで4位に食い込むなど、何度もV争いを繰り広げながら、あと一歩のところで優勝できなかった。
3年連続の勝ち星が途絶えたことが、何より心残りだった。

先週のUSPGAツアー開幕戦『メルセデス選手権』は、前年度のツアーチャンピオンしか出場できない。その選手リストに今年、名を連ねられなかった悔しさ。
大勢のファンの期待に応えられなかった不甲斐なさ。
「…もう一度これに勝って、来年はメルセデスから出たいという気持ちがある」。

自身の開幕戦でもあるこの『ソニー・オープン・イン・ハワイ』は、日本人にとって思い入れ深い大会でもある。
83年、青木功が日本人初の米ツアーチャンピオンに輝いたのもこの舞台だった。
『ワイアラエの奇跡』として今も語り継がれる最終18番ホールでの大逆転チップインイーグルは、当時14歳の丸山にも大きな衝撃を与えたものだ。

このままツアー4勝目を飾れば、この日4番のホールインワンも、語り草となることだろう。

「…明日は、自分の持てる力を出し尽くして、やるだけやって。だめだったらしょうがない」連日のインタビュールームで、力強く語った。
  • 撮影:Canon「EOS 20D」
  • 撮影:Canon「EOS 20D」

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