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2019年度の日本ゴルフ殿堂入りを顕彰

華やかな舞台で、往年のライバル心が交錯する今年の顕彰式となった。
数々の偉業を達成したプロゴルファーに敬意を表するとともに、その歴史を後世に残そうと、2010年に設立された「日本プロゴルフ殿堂」。
今年の顕彰者を称える7回目の式典が、22日金曜日からパシフィコ横浜で始まったジャパンゴルフフェアの会場で行われ、4人の顕彰者が登壇した。

レジェンド部門で選出された佐藤精一氏と小林法子氏、プレーヤー部門からは森口祐子氏と、中嶋常幸が選ばれそのプレゼンターは、青木功と樋口久子氏。

一堂絢爛な顔ぶれに、積年の思いを語るレジェンドがいれば、当時の悔いを打ち明ける顕彰者もいて、笑いあり、涙ありのなんとも味わい深い顕彰会となった。

66年の日本オープンを皮切りに、日本プロ、関東プロなど通算11勝を誇る佐藤氏は、「途中から、青木やジャンボや余計なのが出てきてとっても試合がやりづらくなった」。
AOの出現で、試合数が爆発的に増えたのはいいが、「それも僕が41歳になってから。5年若ければ、もう少し勝てた」と86歳の今になり、ユーモアを交えて恨みつらみをぶっちゃけて、ざわつく会場。
間髪入れずに打つプレーの速さから“早打ちマック”の異名をとった佐藤氏。レジェンドの今なお枯れぬ競争心にはさすがの青木さえ、舌を巻いた。

このたび、殿堂入りを果たした中嶋。
シニア入りしてなおレギュラーツアーにこだわっていたころには、「昔頑張った人、年寄りの人が取るものだと思っていた。他人事のように思っていた」。
しかしいざ、受賞内定の知らせを聞いて、「意外にも、本当に嬉しかった」という。

このたびの殿堂入りは、ツアー48勝の功績が認められただけではない。その人柄や足跡。ゴルフ界のみならず、社会への貢献度など。それらすべてが加味されるだけに「いざ受けてみるとこんなにうれしいものなんだ、って。良き先輩や競いあえる人がいて…。青木さんや、ジャンボさんと競った日本オープン、忘れません」と、ライバルの存在を思わずにはいられない。

またやはりプレーヤー部門での受賞となった森口プロは通算41勝のうち、実に18勝が出産後の勝利という。女子プロゴルフ界が誇るママさんプロが、負けて帰ったある日の家族とのやりとりと、懺悔の思いを打ち明けられた。
「イライラして、幼い息子にあっち行ってと思わず言った。でも息子は理解を示してくれて…」。
プレゼンターの樋口プロも思わず涙した森口プロのこのエピソードは中嶋にも覚えがあって、「僕も、家内に行き場のない怒りをぶつけたことも。いい時も悪い時も、出来の悪い夫を支えてくれた。この受賞は家内に捧げたい」と改めて、家族のきずなを深めるこのたびの受賞となった。

このたび、大リーグのイチローさんが引退を表明したばかりだが、中嶋も昨年は日本ゴルフツアー選手権の撤退を決意するなど、「俺もそろそろ?」と、大いに共感する部分もある。

「もう若いゴルフはできない。現役ばりばりのプロゴルファーではない。でもそれで、何もできないのといったら全く違って、ジュニアの育成とか。オリンピックの手伝いもさせてもらっているし、選手としての限界は訪れていると感じているけどでも選手以外って、これから。殿堂入りは新しいスタート」。

そんな中嶋のいま一番の夢は、「教え子から、五輪に出てメダルを取れる子に巡り合えること」という。「そのためにも指導者としてもっともっとレベルアップしないと」。
今季、レギュラーツアーの出番はさらに減っても「若手ににらみを利かせる存在でありたい」と64歳の情熱は、いくつになっても冷めることがない。