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健闘を誓った二十歳の春! 稲森佑貴も、目指せ東京五輪

当時はまだ、鹿児島県の城西高に通う現役の高校生だった。JGTO主催の宮崎合宿「JGTOゴルフ強化セミナーin宮崎フェニックス・シーガイア・リゾート」が始まったのは、16歳でのプロ転向から2年目の2013年。18歳のとき。

まだ初々しい“10代”の参加者として、19歳の浅地洋佑と出水田大二郎と一緒に、記念撮影におさまった。「あれももう3年前・・・。懐かしいですよね。あの頃は、本当になんにも分からなかったですけども」。成人式を迎えた今年は、“常連”として、慣れた風情で日程をこなした。

早3度目の合宿も、毎年新たな発見があるという。「1年間やってきたことを見直す意味でも、非常に為になる。参加し続けたおかげで、今に至るという感じ」。

昨年は、幾度かV争いにも名を連ねて、昨季新規の「ダンロップ・スリクソン福島オープン」では自己最高の2位タイにつけた。ダンロップフェニックスでは初日に単独首位で飛び出して、11位タイに入った。

ツアー出場はわずか7試合ながら、「限られたチャンスの中で、昨年はよく頑張れたほうだ、と」。賞金ランキング75位は、上位60人までのいわゆる第一シードの次の枠に当たる同61人から75人目の「第二シード」に潜り込んだ。
「優勝のチャンスを逃したことや、第一シードに入れなかったことは、それはもちろん悔しいですが、昨年はツアーと、チャレンジトーナメントのどちらに比重を置いて戦うべきかとか、迷ったり悩んだり。これまでのゴルフ人生で、一番良い経験が出来た1年だった。その中で、総合的にはよく頑張った、と自分で思えた」。

プロゴルファーとしての成長の歴史が、この宮崎合宿とちょうど重なる。「これまでやってきたことの、間違いに気付かされたのが、第1回目」。廣戸聡一先生の「フォースタンス理論」は、人間の体の動かし方には4つのタイプがあるとされ、ゴルフのスイングもタイプ別に添った動きを知ることで、より高いパフォーマンスが発揮できるというものだが、「この合宿に参加するまでは、全然違うタイプのスイングをしていたんです。そのせいで、体に無理な負担をかけていた部分も多かった」。
廣戸先生によれば、若いうちは、それでもなんとかごまかしてやれるが、年齢を経るごとに必ず、どこかにひずみが出てくるという。それだけに「早いうちに知ることが出来て本当に良かった」。

まずは自分を知るということから始まった合宿は、「2回目、3回目と参加するたびにより深く理解することが出来て。年々変わってきていることが、実感できます」と、稲森は言う。
合宿で教わったストレッチやトレーニング法は昨季も、大事な場面で取り入れていたと言い、「緊張してきたら、コースでも肩を動かしてみたり、僕は股関節を内側に回すと良いと言われたのですが、試合中にもやってみたり。とても役に立っています」。合宿に参加したものだけが分かるその動作が、今年も生かせる場面が来るといい。

今年も1回につき5日間計3回に分けて行われる合宿の初回は、ツアー通算10勝の髙橋勝成を特別講師に迎えたが、廣戸先生は「大先輩が大変な時間をかけて積み上げてきたものを、みなさんに惜しげもなく披露してくださった。この恩は、結果でしか返せないし、みなさんにはその責任がある」と鼓舞された。
「僕もその“責任”を果たせるように。恩返しの初優勝をあげて、今年は本シードに入りたい」と、稲森も意気込む。
来年には112年ぶりにゴルフ競技が復活するリオ五輪。さらに4年後には東京五輪を控えて、「僕も、必ずオリンピックに出るんだという気構えで、頑張る」。心に誓った二十歳の春を忘れない。

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