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ダンロップフェニックストーナメント 2016

ベテラン・渡辺司がフェニックスに仕掛ける罠

スタート前のジャンボと談笑する渡辺(左)。今週のコースセッティングアドバイザーとして、手腕をふるう
スタートの1番で、ジャンボ尾崎が昔なじみに笑顔を向けた。何やら談笑して出ていった。JGTO新会長に、青木功が就任した今年。その意思を体現する右腕の一人として、新体制を支えてきたのがベテランプロの渡辺だ。

主にプロゴルファーで構成されるトーナメント担当理事の筆頭として、今週はこの歴史と伝統のダンロップフェニックスで、コースセッティングの監修と補佐をつとめる。

今年は主催者の要請に応えて、6人の担当理事が持ち回りで受け持つ中で、渡辺は7月のセガサミーカップに続く、これが2試合目の監修となった。

その2日目は、この日も早朝からホールロケーションの担当競技委員と、最終点検に余念がなかった。
今年43回目。
「フェニックスは各ホールごとにはっきりとした個性がある」。それを踏まえて4日間と通したコースセッティングにも、長い年月で踏襲されてきた伝統というものがある。
「カップの位置にしても、従来の形からそれほど大きく変えられる要素は少ない」。しかし、その中でも今年は青木新体制として、どう目新しさをつけていくか。
「僕は各日、各ホールで、どういう組み合わせをしていくかだと考えた」と渡辺。

たとえば穏やかな天候に恵まれた初日。
「気持ちよく、ピンを狙っていけるような。その中で、スコアを伸ばせなかった選手には、出遅れ感が出るようなピン位置を考えた」。
しかし、この日2日目は打って変わって雨模様に「今日は、いかにボギーを打たずに回れるか。攻めながらも守りを意識してもらうような。設定されたパーに沿って、いかにスコアを作っていくかを考えてもらうような、そんなピン位置にこだわった」という。

そして、いよいよこれから始まる決勝だ。
残り2日。たった一人の勝者を決める戦いの中で、渡辺はコースセッティングを通して「優勝争いしている選手たちに、3つのことを問いたい」という。

その一つ目はまず戦略だ。
「このホールは攻めた方がいいのか。それとも一歩引いたほうがいいのか」。ピン位置を見て、押すのか引くのか。攻守のバランスを見極める能力だ。

さらに、2つめはその戦略を体現する技術だ。
「頭の中には戦略があっても、技術がなければ実現できない」。さらに言えば3つめだ。
「そこに打っていく勇気がなければ優勝できない」。
戦略と技術と勇気。
決勝2日間ではこの3つを試すピン位置の構想が、渡辺の中にはすでにある。
「今のツアーには、もちろんこの3つを兼ね備えた選手はたくさんいる。その中で、よりそれらが優れた選手は誰か」。
残り2日でそれを問いただす。
さらに突き詰めれば「その中でも、もっとも優勝への強い思い入れがある選手は誰か」。
ふるいにかけるセッティングをと、渡辺はじっと頭を巡らせる。
「最終日にむけて、ほんの数ヤードのずれが1ペナルティにつながるホールもいくつか仕掛けた」と、渡辺。
ベテランが仕掛けた罠をかいくぐって今年、宮崎で頂点に立つのは誰か。

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