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日本オープンゴルフ選手権競技 2015

88年ぶりの快挙も夢じゃない。史上最年少の日本アマ覇者、金谷拓実さんが単独2位に

2日目にして同組のプロ相手に堂々とやりあったのは、広島国際学院高校の2年生。金谷さんが、首位の小平と伸ばし合い。「無我夢中でした」と、金谷さんは初々しく振り返ったが、その割には、この日の自身の全プレーも完璧に覚えていた。

選手のスコアをホールアウト後にチェックするJGTOのスコアリングスタッフが、こんな話をしていたことがある。ある冬の大会で、大雨にたたられて、手がかじかみ、結局1ホールもスコアカードにスコアを記入できないまま上がってきた丸山茂樹が、アテスト場で1ホールたりとも違わず、他人のパット数まで完璧に書き込んだという話。
同伴競技者が驚いて、「自分には無理」と、口々に尊敬のまなざしを送った光景が、いわゆるAONと重なった。青木にジャンボ、中嶋も自分のプレーはおろか、誰が、いつどこで、どんなゴルフをしたか、詳細に覚えていて、いつでもその記憶を引き出して来られる。
超一流の選手に共通したひとつの傾向である。

その片鱗をみせた金谷さんの記者会見。1番の2メートルのバーディも、9番では165ヤードの2打目を9番アイアンで、ピンそば50センチにつけた3連続も、すらすらと出てきた。17歳の66の快進撃に「これがゾーン・・・。そうなんですかね。今日は、自分のことで精一杯で、自分のことしか考えていませんでした」と、これまた照れくさそうに笑う割にはこれまた、小平のプレーすら、はっきりと覚えていた。

「小平さんの18番のティショットは凄く上手かった。フェードを打って、フェアウェイをキープするなんて、凄いなと思った。飛ぶし、コントロールも出来ていいなあと思いました。自分も小平さんのように、飛距離が出て、テクニックも上手い選手になりたいな、と」。

そこまで詳細に語っておきながら、「回っているときは、自分のスコアのことも、全然考えていなかったので、上がって6アンダーなんて驚いてます」と、金谷さんは言い張るのだ。

5メートルのバーディを沈めた15番のあと、16番では単独首位に立った。「自分の名前があるだけでも嬉しいのに、一番上にあったときは夢みたいでした」と頬を染めながらもリーダーボードを逐一、確認してしっかりとゲーム展開も把握していた。

近頃、無料通話アプリで交流を深めている女子アマの勝みなみさんとは「かっちゃん」「たくちゃん」と呼び合う仲。前日の初日は8位タイ発進に、友達からたくさん連絡をもらったが、「かっちゃんからは来なかった」と、そこはちょっぴり残念だったが勝さんが昨年、女子ツアーで最年少優勝を飾ったときについて、教えてくれた。
「ここらへんにもう一人の自分がいた」と、自分の頭の左上あたりを指して言った感覚がこの日、少し分かった気がする。
アマVなら、1927年の第1回大会の赤星六郎氏以来となる快挙だが「半分終わっただけなので・・・。明日もしっかり準備して、最高の状態で臨んで、良いプレーが出来ればいい」。
今年、史上最年少のアマ王者は周囲のざわめきとは裏腹にこの日、最後まで冷静だった。

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