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ダイヤモンドカップトーナメント 2003

『勝てなかった5年間。“四角”に“丸”をはめこもうとしてたんだ』涙の復活優勝から1ヶ月もたたぬうちに今季2勝目をあげたトッド・ハミルトン、強さの秘訣

優勝インタビューの席上で、「どうして、これまで5年間も勝てなかったのに、今年は1ヶ月もたたないうちに早くも2勝目をあげられたの?」。

この質問に、ハミルトンはおもむろにペンを取り、紙になにやら書きはじめた。そして描き出されたのは四角と丸。2つの図形を指で示して解説した。

「昨年までの僕は、この“四角”の中に、“丸”を無理やりはめこもうとしていたんだ。分かるかい? つまり、常にその場の状況に合わないことを、やろうと試みていたってこと。でも、四角は絶対に丸にはならない。そのことにこの年になってやっと気が付いたんだよ」

たとえば、以前は、明らかに狙えない状況から何がなんでもピンを向いて打ったり、初日の1番ティから、いきなり「勝つぞ」と意気込んでみたり。

「その結果、自分に余計なプレッシャーがかかって、うまくいくものも、いかなくなっていたんだね・・・」

今週は、「状況に合わせ、自分の持ち味を生かした」コースマネジメントを貫いた。少しでも曲げると大トラブルになる大洗ゴルフ倶楽部。「ドライバーを握って良いホールは、2番、7番、9番、10番の4ホールだけ」と限定した。台風の影響で大雨の降った前日3日目こそ、5番ホールでもドライバーを握ったが、それ以外はこの戦略を貫いた。

たとえば、自分のもち球のフェードボールが生かせる2番パー5では、毎日、思い切ってドライバーで攻め、4日間ともバーディだ。

反対に、ドローボールが要求される17番パー4は、たとえ距離が残っても2アイアン。「リスキーなショットを避けて、徹底的に安全性を重視したんだ」。

ピンチにも、常にポーカーフェイスで冷静に対処。6番では、深いバンカーからOK距離につけてパーセーブ。難しい16番のパー3では、右林に打ち込んだアプローチを、松の木の下からうまくスライスラインに乗せて、切り抜けた。

最終18番は、1メートルのパーパットが、ウィニングパットだった。これをど真ん中から決めて、この日最終日はノーボギーのゴルフ。4日間のベストスコア65をマークして2位と3打差の通算12アンダー。今年早くも2度目の頂点に立ったハミルトンは、晴々とした表情で言い放った。「今回は、泣かないよ(笑)。だって、2度目でかなり気持ちの余裕も違ってる。やっとリベンジが果たせたのも嬉しいしね!」

96年の今大会。ハミルトンは、コースレコード64を出した尾崎将司に8打差をひっくり返されて、プレーオフに敗れている。

また、今年涙の復活優勝をあげた前回のフジサンケイクラシックは、同じく96年に、ブライアン・ワッツにプレーオフで負けた過去がある。「実はあのとき味わった悔しさが、今日モチベーションを保つのにも役立ったんだ。2つに勝って、これでかなりスッキリだよ!」

・・・ちなみに、その96年。ハミルトンは、今大会の3週あとのよみうりオープン(当時名称ポカリスウェットよみうりオープン)でも、プレーオフの末、福永和宏に敗れている。「そう、96年はわずか6週間の間に3回も、だったんだ。・・・やっぱり今年は、このあとのよみうりオープンでも勝って、しっかり復讐を果たしておくべきかなあ(笑)」

勝てば勝つほど「欲が出る」というハミルトン。勢いに乗って、今年はいったい何勝を上げるだろう。 

写真=大会に協力くださったボランティアのみなさんとパチリ。

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