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第16回スナッグゴルフ対抗戦JGTOカップ全国大会 ドリームチームwith遼/スナッグゴルフ全国大会(7月15日)

ついに、プロのプライドは子どもたちの手によって打ち砕かれた。我らがドリームチームが、全国33校181人の頂点を取り損ねた。

今年、初キャプテンに就任した武藤が直接、声をかけてかき集めた選りすぐりのメンバー5人である。
「僕と、副将の孔明のコンビはもはや鉄壁」。
富村と、小鯛と大堀は「これからを担う20代の若手3人。仲間思いで、性格も申し分ない」。
そして34歳の額賀。過去3度のドライビング王だ。「飛ばし屋が、スナッグゴルフをやったらどうなるのか、と。僕が一番興味があった。子どもたちにも見せてあげたかった」と、もっとも期待の1人として抜擢した。

額賀なら、グランディ那須白河ゴルフクラブ・NASUコースの特設コースのすべてのパー4で、ワンオンが可能である。スナッグゴルフでも、ドライバーのデモショットでも、武藤が予想していたとおりに子どもたちから頂きました!
「額賀、ハンパないって!!」。
豪打を連発して子どもたちを圧倒したはずだった。
「小学生には負けられない」とバランスの取れたチーム編成ではどのプロも、日本記録の「21」を更新する快スコアを持ち帰ってくるはずだった。

「子どもたちが、真剣すぎてびっくりした」とつぶやいたのは、大堀だ。初出場の選手が毎年、決まって度肝を抜く子どもたちのガチンコ勝負。ピンと張り詰めた空気。
スコアを打って、プレー途中に泣き出す子もいる。ルールやマナーも行き届いており、レベルは年々、上がるばかりだ。
日本一にかける子どもたちのひたむきな思いがついに今年、プロゴルファーを凌駕した?!

6人中上位3人の記録がチームスコアとして採用される。ドリームチームの「70ストローク」は、優勝校の茨城県笠間市立岩間第三小学校に、1打及ばなかった。
チームトップで帰ってきた孔明と大堀でも、23を出すので精一杯。「悔しい・・・ほんと残念!!」(孔明)。今年は「22」を出した子が2人もいて、並み居るプロはベストスコアでも1打差で負けた。
額賀は「24」を出しても、小鯛と並んでカウントバックで貢献から漏れた。「27」で最下位の富村をかろうじて従えたが「僕も、26も打ってしまった」と、キャプテンもかたなしだった。

今年、ドリームチームは惨敗した。
「それでも今日は、嬉しかった」と、武藤は言った。
「子どもたちの楽しそうな笑顔が今年もたくさん見られたから」。

今年、第16回を迎えた「スナッグゴルフ対抗戦JGTOカップ全国大会」が、東北に会場を移して6回目。
2年前の大会では、ここ福島からみんなで遠く、熊本に思いをはせた。
そして、今年の大会は平成最大といわれる豪雨災害が起きてからまだ9日目。特に被害が大きかった広島と岡山の2県から、今年は5校が参加しておりドリームチームの面々も、子どもたちのことが心配でならなかった。

武藤もラウンド中に、子どもたちに付き添う親御さんたちに、さりげなく現状を尋ねて歩いた。「家の片付けが必要な子もいるそうですが、それでも今日は頑張って会場に来てくれた、と」。
災害時は自宅近くの土砂崩れで、眠れぬ夜を過ごした子もいたという。
「でもせめて今日だけでも、怖かったことを忘れて楽しんで欲しかった」(武藤)。

前日の14日に梅雨明けしたばかりの福島の、この日の最高気温は37度。
「俺たちオジサンにはキツいよ!」。
炎天下で悲鳴を上げても、音は上げない。とにかく笑って欲しくて頑張った。スコア集計を待つ間のエキシビションマッチも本気で挑んだ。
「フラフープくぐり」や「うちわティッシュあおぎ」「割り箸ゴム渡し」や「お裁縫針糸通し」など“異種7競技”はどれも、子どもたちからやれ「大人げない」だの「イライラする」だの非難ごうごう浴びても、6人みんなで全力投球!!
子どもたちと灼熱の芝生で転げ回って笑い合った。

そのあとの表彰式では準優勝を飾り、来年のシード校に入った広島県の東広島市立三ツ城小学校のみんなも「今日は楽しかった」と、言ってくれていたことにもプロたちは安堵した。
子どもたちの興奮はさらにこの人の登場で、最高潮に達した。

個人戦を表彰するプレゼンターとして、突如予告もなく現れたのは選手会長。
「頑張ったみんなにおめでとうございますという気持ちを伝えたくて来ました」と、石川遼。
「全国レベルのスナッグゴルファーは、プロとも良い勝負をするのだ、と。練習の成果ですね。ここから凄いプロゴルファーが誕生するのではないかと思うとワクワクします!」。
この日一番大きな子どもたちの歓声は悲鳴にも似て、会場は騒然となった。

「俺たちも相当頑張ったけど、やっぱり遼だ」と、口々に言ったドリームチームの面々。
「子どもたちが、本当に嬉しそうにしてくれたから。遼が来てくれて本当に良かった」とキャプテンも満足そうだった。
ドリームチームwith遼。この日、子どもたちとプレーをしたのは6人だが今年、1日限りの夢の共演を果たしたのは7人の凄いプロゴルファーたちだった。
  • あっ、ひょっこりはん!!
  • 石川がサプライズで表彰式のプレゼンターに!!

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