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フジサンケイクラシック 2017

H・W・リューが5年ぶりのツアー2勝目

今度こそ、大観衆の前で勝った。大好きな日本で、5年ぶりのツアー通算2勝目を挙げた。最終日は、最終組の4つ前から追いついた。
通算3アンダーで並んだ小平と、ハン・スンスと臨んだプレーオフにはひそかに経験と、自信があった。

フェアウェイからみすみす打ち込んだ奥のバンカーは、「絶対に入れてはいけないところ。終わったと思った」。
3打目のアプローチは深い淵の先のグリーン面さえ見えずになかば「運にまかせて」当てずっぽうに打ったという。

それが、思いがけず2メートルに寄った。小平も、ハン・スンスもパーセーブを逃して、最後に打ったリューのパーパットは先のバンカーショットで、カップを行き過ぎた際に「ラインが見えていた」と、自信もあった。

昨季限りの日本ツアー撤退を表明した、S・K・ホから教わったパターレッスンも生きた。
初来日から14年のシードを守った第一人者に先日、言われたのは「肩の高さを変えずにストロークするように」。グリーン上のミスが格段に減っていた。
難なくウィニングパットを沈めて「久しぶりにやっと勝てた」と先輩にも感謝した。

勝てずにいたこの5年は、特に今年序盤がきつくて「体調も悪いしトレーニングをしても、結果が出なかったりホームシックにかかったり」。
夜は、晩酌前にしらふで2人の息子とテレビ電話で話す日課が、せめてものお楽しみ。
なかなか良い報告が出来なくても、「ケンチャナヨ、ケンチャナヨ(大丈夫、大丈夫)」と励ましてくれる長男のユータースンくん(7歳)。慰められた。
先日、家族に仕送りをしたばかりで、すっからかんだった銀行口座も優勝賞金2200万円で一気に潤し、家族に報いた。
これを元手に計画中だった、家族の日本移住プランが一気に実現にむかえば、もう寂しくない。

2度目のVシーンは今度こそ、大観衆の拍手喝采も浴びた。
初優勝を飾った2012年のコカ・コーラ東海クラシック(現・トップ杯東海クラシック)は静寂の中。
あの最終日は台風の襲来を受けて、安全を最優先した異例の無観客試合となりあの片山晋呉をプレーオフで下しても、シンと静まりかえった三好で、小さくガッツポーズを握るしかなかった。

2勝目こそ改めて、再びプレーオフを制して今度こそ思い存分、空に向かって吠えた。
「プロなら誰でもそうだと思うがお客さんの声援が一番の励み。今日は頑張れとか、諦めるなと声をかけてもらって終わっても、たくさん握手を求められて本当に嬉しかった」。
5年ぶりの2勝目にしてやっと、勝つことの醍醐味を味わうことが出来た。

言われるまで気づかなかったが今季、これが韓国勢の勝者第一号だ。
2度の賞金王の金庚泰(キムキョンテ)を筆頭に、ジュニア時代から国を背負って立つエリートの中にあっても「私は自分をトッププロだと思っていないので・・・」。自称・劣等生の35歳は「光栄ですね」。
2度目の美酒にも控えめな笑顔は、初V時と変わらない。

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