記事

レジェンドたちのもうひとつの戦い!! ワイヴスコンペ

あいにくの悪天候に見舞われた大会初日。いっこうに降り止まない大雨も、“出場選手”たちのたっての希望で、いざ雨天決行だ。

「ザ・レジェンド・チャリティプロアマトーナメント」は大会初日の競技終了後にもしかしたら、本戦よりも(?!)白熱した戦いが、会場の麻倉ゴルフ倶楽部(千葉県)で繰り広げられた。

1番のパー4と8番のパー3、そして最後は9番のパー5で締める3ホールの戦いは、名付けて「ワイヴスコンペ」。
英語のワイフの複数形で「ワイブス」。つまり、プロゴルファーの奥さんたちによるコンペだ。

ひどい悪条件も、さすがは勝負師たちの妻。大会は、初の試みを「ぜひ、実現させましょう」とみな口々に、レインウェアも着ないで勇ましく、出ていった。ラウンド解説に、ベテランの牧野裕が加われば、本気モードはいっそう満点。

日頃は、内助の功で支える奥方を、この日ばかりは旦那が支える。夫人のキャディバッグを担ぐのは、いつもはコースを大いばりで(?)闊歩しているプロゴルファーたち。
いつもは、すべて自分が独り占めにしているファンの視線を、いかに愛妻に注ぎ込み、輝かせるか。
夫の手腕にかかっている。
妻のクラブの番手選びや、グリーンのラインの読みはもちろん、1ホールにつき1度だけ夫に許された“助っ人”の1打をいかに、スコアに結びつけることが出来るか。
そこにはまさに、いつもの夫婦模様を垣間見るようで・・・。

普段の試合以上に、真剣に歩測をする尾崎直道。華麗なショットで忠実に、夫の助言を体現していく世志江夫人。
しかし最終ホールで「左を向きすぎている」とアドバイスを送ったのに、そのまま左にすっ飛んで、「うちの嫁は、ほんとに俺の言うこと聞いてくれない・・・」と、つぶやく姿がちょっぴりせつない。

普段は長尺パターを愛用している加瀬秀樹。文子夫人の短いパターに四苦八苦だ。文子さんは、週5回のラウンド。また週40キロを走り込む努力家でもある。昨年末にはホノルルマラソンを完走した。それにひきかえ、昨年末に膝の手術をしたばかりの旦那は、ゴルフも「奥さんのほうが上手い」と、周りに冷やかされる始末だ。

横田真一の奥さんの夕子さんは夫ばかりか、長男の知己くんにもお助けの一打を受け持たせて、家族の結束力を存分にアピールした。
谷原秀人の絢香夫人は、元アイドルの可憐な容姿に似合わず、非常に力強く完成されたショットで、日頃の旦那のレッスンの成果を披露したのは良かったのだが、他のプロから「絢香ちゃんは、谷原みたいにクセがなくてきれいなスイング!」と絶賛されて、夫は褒められているのか、けなされているのか?

世界のアオキを支えるチエ夫人。ピンチを迎えるたびに「うちの息子はどこかしら?」。その声に、すかさず参上したのは松山英樹。大会の実行委員をつとめる青木に限って特別に、松山に“助っ人”の1打を託すことを許された。
しかし1ホール目はさすがのパワーヒッターも、いや、だからこそシャフトが柔らかくて、重量の軽いレディースクラブになじめずに、21歳の怪物がまさかのミスショットも「松山くんの貴重な一打が見られた!」と、奥様方から別の意味で、やんやの声援を浴びて苦笑いだ。

そんなこんなの大激闘を制したのは、倉本昌弘の京子夫人。大会の出場が決まって、秘密の特訓をしていた。かつてはマネージャーをつとめ、今も親交のある岡本綾子プロ。「岡本さんと、夫にも練習を手伝ってもらって、その甲斐はありました!」と、ホールインワンをかつて3度も経験した腕前にも、さらに磨きに磨きをかけてこの日を迎えた。ボギー、ボギー、パーと、大雨にもかかわらず、みごとなスコアで“初代チャンピオン”に輝いて「ナイスアシスト、最高のキャディでした!」と、力一杯抱きつかれて、ムフフな夫。
昨年、嬉しい1勝をあげた欧州シニアツアーは手引きカートで支えてくれた京子さんに思いがけない形で報いることが出来た倉本は「来年は、ディフェンディングチャンピンとして挑みます」と、早くも妻を支える気満々だった。

妻のゴルフの腕を競い合うコンペははからずも、夫婦のおしどりぶりを競う大会にもなった。妻が雨で濡れないように、さりげなく傘をきせかける夫。妻のために、黙々とバンカーをならす。汚れたボールやクラブをタオルで、かいがいしく磨く男の姿。ミスショットにショックを受けて、その胸になだれ込んで嘆く妻。あの世界のアオキが、チエさんの頭をヨシヨシと、慰めた。その目は愛しさに満ちていた。妻の1打を固唾を吞んで見守る夫の視線には、誰もみな慈愛にあふれていた。
スコアには差が出たが、円満ぶりには点数がつけられない。どの夫婦も羨ましいくらいほどの、ラブラブぶり。レジェンドたちの栄光も、まさにこの妻あってこそ、を証明した1日でもあった。

<第1回ワイヴズコンペ結果>

優勝 倉本京子 (5,4,5=14 +2)
2位 青木チエ (7,5,5=17 +5)
3位 尾崎世志江(6,6,7=19 +7)
4位 加瀬文子 (10,4,7=21 +9)
5位 谷原絢香 (6,4,13=23 +11)
6位 横田夕子 (10,5,12=27 +15)


関連記事