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日本オープンゴルフ選手権競技 2014

片山晋呉が3打差3位

決勝ラウンドを前に首位とは3打差がついていて、しかもラフの深さが例年ほどではなくて、「分かっているけど、自分も行きたいけど」。でも、行けないのは、この大会の怖さを知っているから。2005年の廣野(兵庫)と、2008年の古賀(福岡)と、あのタフな戦いを制して、「日本オープンは、自分で作りに行かないもんだと頭の中で、思っちゃっているから」。

2番で右ラフからの2打目。「打てば、グリーン回りまで行くけど、あえて行かなかった。100ヤードを残した」。いったんラフから出して、丁寧に刻んだのは、「ラフが短いからこその難しさがあるから。狙って、またラフに入れたらアプローチは寄らない。それならまだフェアウェイからウェッジを使ったほうが、チャンスがあるから」。
そんなふうに、「保険をかけてあえて行かない」という選択を自分に課している。「チャンスも求めていない」。
ティショットも、ラフに入れるよりはいっそバンカー。「あえて入れている」というホールがいくつかあって、またそこからのリカバリーが絶妙である。

前半の14番は、「球の高さといい、今年いちばんのショットが打てた」と自画自賛のバンカーショットは60ヤードから、ピン1メートルに見事に寄せた。最後の9番は、さらに鮮やか。112ヤードのバンカーショットは、やや左足上がりのライからピッチングウェッジで、ピン上50センチだ。
けっして自分から仕掛けてはいない。それがここでの片山の鉄則だ。それでもジワジワと、首位に詰め寄っていくうちに、自然と気持ちは高ぶってくる。
9番でドライバーを持って、あえて狭いフェアウェイに向かって打ったのは、「打ちたかったから。あそこでは、ドライバーを打ちたいのよ。それでフェアウェイに行ったら格好いいもん」。そして大ギャラリーの喝采を浴びる。想像しただけで、胸がすく。「な〜んて言って、明日は刻んでるかも」。確かに、3日目あたりからは、そろそろタイトルの重みがさらにのしかかってくる頃かもしれない。
開幕前日。水曜日の夜は、コースに歴代のチャンピオンが招待されて、フレンチのフルコースを囲むのが恒例だ。これを毎年、片山はとても楽しみにしている。AONをはじめ、憧れの選手たちとの晩餐は、片山にとって至福の時間だ。
今年は、中嶋と尾崎直道から良い話が聞けた。どんな話か? 「それ言わせる? 話し出したら15分以上はかかるよ」と、内容の濃さを伺わせながら「中嶋さんの夢は、もう1回ここで勝つことなんだって」。すでに4勝もあげながら、あと3日で60歳の欲は、尽きることがないようだ。
「多分、冗談なんだろうけど、でも冗談じゃないかもしれない。中嶋さんの思いが伝わってきた」。同時に背筋が伸びた。「改まった。あの人があそこまで思って、まだ挑もうとしている」。中嶋ですら、まだまだ飽き足らないこのタイトル。
その舞台で「優勝争いをすることが、大事なんじゃないか」と今年も心新たに開幕の日を迎えた。
春先に発症した。頸椎のヘルニアから来る腰の痛みは、左手の人差し指と親指にシビレが残り、「今もまだ、いっぱいいっぱい」。
そんな苦しみを堪え忍んでも、挑む価値があるこのタイトル。2日目を終えて、「6アンダーはちょうどいい位置」。ニヤリと笑った。

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