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賞金王が本格始動!

コースメンテナンスやスタッフのホスピタリティの素晴らしさもさることながら、芝の上から打てる広い練習場や、敷地内のリゾートホテルには本格的な設備のトレーニングジムを擁し、プロも絶賛の抜群の環境にある。
ちょうど、前週には一昨年の賞金王・片山晋呉も現地入りした。
谷口は、3年前からここでキャンプを行うようになった。
昨年末に、トレーニングジムのある大阪府内のマンションに引っ越したばかり。すでに年頭から秋山武雄トレーナーの指導のもと体調管理につとめ、近隣コースでコツコツと調整を始めていたとはいえ、本格的な打ち込みはこの合宿が今年初。
さぞ気合が入っているかと思いきや賞金王のラウンドは、思いのほか淡々としたものだった。
約2ヵ月後には自身5年ぶりのマスターズが控えるが、「特に取り組むべきことは何もない」と、気負いは微塵も見られない。
今年は初の連続賞金王の期待もかかるが、「そんなこと、考えながらゴルフが出来るわけないでしょう」と、素っ気無い。
しかしほかでもない、それが“谷口流”のオフの過ごし方だ。
たとえば、オフに普段は考えられないようなハードなトレーニングにトライしたり、スイング改造に精を出す選手も多いが、谷口にとってはそれ自体がすでにNGだ。
特別なことは何もない。むしろ、できるだけ普段どおりの生活を心がける。
「オフはできるだけ“オフ”を作らない」と、決めているからだ。
それは、合宿中ももちろん同じで朝はスタートの2時間前に起床。朝食を取り、30分程度のトレーニング。さらに30分程度のマッサージとストレッチ。十分に体をほぐしてコースへ。スルーで18ホールを回り、ホールアウト後はスタート前よりも軽めのトレーニング、マッサージとストレッチ。夕食をとり、早めに床につく。
これを5日間。ちょうど、トーナメント期間中と同じ日数だ。水曜日のプロアマ戦から日曜日の大会最終日を想定しながら日々を送る。
それだけに練習ラウンドといえども、試合と同じように、勝ち負けには真剣そのもの。
賞金王との勝負に名乗りをあげた若手プロを相手に、負ければ本気で悔しがるし、ときには本番さながらの、ド派手なガッツポーズを繰り出すこともある。
こんな5日間を、数週間おきに繰り返すのが最近のオフのパターンだという。
今年は海外遠征のスケジュールがたてこんでおり、合宿の回数自体は例年よりも減ることにはなるが、基本路線は変わらない。
マスターズも賞金王も、「そんな生活の積み重ねの結果だから」と谷口はいう。
プロ17年の間に培ってきたものへの、自信の裏返しでもある。
確かに、以前はほかのプロ同様に必要以上に体を苛め抜いたこともあったというが、結果はあまり思わしくなかった。長年の試行錯誤と経験から、この形に落ち着いた。
一見、地味にも思えるオフ合宿も「継続は力なり、というでしょう?」とは、ずっと谷口をそばで見てきた秋山トレーナー。
「当たり前のことを、いつでもどこでも、当たり前に続けるのは簡単なようだけど、実は大変なことなんです。それ自体が非常に非凡なことなんです。それが出来て、はじめて世界で通用するものだと私は思うんです」(秋山さん)。
昨年の5年ぶり2度目の賞金王も、自分が信じたこのやり方を頑固なまでに、守り続けてきたからこそだった。
そんな合宿生活も、シーズン中とひとつだけ違っていることがある。
谷口を慕って合宿に加わった若手らに、ラウンドの合間に熱心にアドバイスする姿だ。
試合中には禁じられているこの行為も、この合宿の間はルールも気にせず、存分に若手にハッパをかけられる。

ラウンドの合間に後輩へのレッスンにも熱がこもる 
賞金王のラウンド合宿は、どんな1打も真剣そのもの!














